中国が目指す5%成長、「計画なき目標」との声-達成への道筋見えず
(ブルームバーグ): 中国は世界第2位の規模を誇る経済への信頼回復に向けて、今年の成長率を5%前後とする強気な目標を打ち出した。だが、李強首相が達成に向けた計画の詳細を語らなかったことで、中国が直面する問題の深刻さと相いれないとの指摘がアナリストからは上がっている。
李首相は5日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、昨年の成長目標を維持すると発表した。中国が成長目標を引き下げなかったのはここ10年で2度目。前回は米国との貿易戦争が始まった2018年だった。
李首相は「あらゆる方面」からの支援が必要だと強調したが、政府活動報告にそれは反映されていなかった。財政赤字は横ばいに維持し、消費促進のための大型対策は回避。不動産危機の解決に向けた具体策も乏しかった。中国が1990年代以来となる物価下落の長期連鎖に陥っていることについても、直接は触れられなかった。
ナティクシスのアジア太平洋地域チーフ・エコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は比較対象となる昨年の高いベース効果に直面している今年の成長目標について「これは計画のない目標だ」と指摘。その上で「これは当局が事態の深刻さを理解していないことの裏返しだ。賃金が下がり続ける中で消費をどう支えるつもりなのか。デフレ問題にどう対処つもりなのか」と問いかける。
政府の年間目標について助言している清華大学教授の李稲葵氏は、今年の成長目標は「かなり前のめりだ」と話す。老朽化した市街地の改修など5日に強調されたプロジェクトは極めて重要だが、当局者は個人消費に焦点を当てるべきだという。
李氏はブルームバーグテレビジョンに対し、「首相にも率直に進言しているが、中国は消費促進に向けた一段と積極的な政策が必要だ」と指摘。次の大型連休に1兆元(約20兆8500億円)規模の消費補助金プログラムを提案したと続けた。
政府はまた、今年の都市部の新規雇用目標を過去最高となる1200万人以上に設定した。中国では昨夏、若年層の失業率が過去最悪を記録。その後、政府はデータの公表を一時停止し、数カ月後に復活させたものの、実態よりも楽観的な数字だとみられている。