モニターへ「全集約」どう思う? ボルボEX30 ツインモーターへ試乗 428psを活かせないシャシー
428psを効果的に活用できないシャシー
5秒以上前方から目線が逸れると、ドライバーの監視システムが警告を鳴らす。煩わしい場合は、監視システムをオフにはできる。だが、それは安全といえるだろうか。 ドライバー監視システムという技術は、現在のモデルへ求められる重要なものだと思う。この点で、ボルボを批判するつもりはない。表示情報の多いヘッドアップ・ディスプレイが装備されていれば、ずっと運転のしやすさは高まるはず。 今回試乗したEX30は、ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラというグレード。最高出力は428psもあり、場面によっては不必要に感じるほどパワフルだった。これほどの動力性能を備えているなら、見やすいスピードメーターは歓迎されるだろう。 全長は、新しいフォルクスワーゲン・ティグアンより約300mmも短い。それでいて車重は1885kgあり、遥かに重い。パワフルなツインモーターを搭載するが、ストロークの長いサスペンションも与えられている。 0-100km/h加速は、少々誇張気味のようだが、3.6秒が主張されている。しかし実際のところ、秀でた動力性能を効果的に活用できるほど、姿勢制御や操縦性に締まりはないといえるだろう。 このクラスのクロスオーバーとして、加速力は例外的に鋭い。だがシャシーはそれに追いつけず、速く運転するほど、深みにハマっていくような印象だった。
シングルモーターの方がバランスが良い?
滑らかなアスファルトでは好印象で、幹線道路やロータリー交差点での落ち着きも良好。ところが郊外の道を飛ばし始めると、姿勢制御が落ち着かなくなっていく。かつてのボルボのように、ドライバーを優しく包み込む安心感や信頼感は得にくい。 実際にステアリングホイールを握っていないので、推測ではあるが、シングルモーター版の方が、動力性能とシャシーとのバランスは優れるのではないかと思う。ボルボも、ツインモーター版より売れると予想しているから、準備ができ次第試乗してみたい。 今回のツインモーター・パフォーマンス・ウルトラは、方向性が定まりきっていないといえるだろう。持続可能性を優先しているのか、過激な走りを求めているのか。 EX30に載る駆動用モーターは、ボルボXC60の後継モデルに当たる、次期バッテリーEVにも搭載予定だそうだ。小さなクロスオーバーには、少し手に余るユニットなのかもしれない。
ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス・ウルトラ(英国仕様)のスペック
英国価格:4万4495ポンド(約841万円) 全長:4233mm 全幅:1836mm 全高:1549mm 最高速度:180km/h 0-100km/h加速:3.6秒 航続距離:449km 電費:5.7km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1885kg パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター バッテリー:64.0kWh(実容量) 急速充電能力:-kW 最高出力:428ps 最大トルク:55.2kg-m ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) 中嶋健治(翻訳)