「脳梗塞」と「心筋梗塞」のリスクが急上昇…健康に気を付けるなら絶対知っておくべき「コレステロールの真実」
多すぎても少なすぎても脳卒中に
コレステロールはリン脂質とともに、細胞膜の材料として使われます。また各種ホルモンやビタミンDの原料になったり、脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸に使われたりしており、人体になくてはならない物質です。しかしHDLとLDLのバランス(LH比)が崩れると、健康上の問題が生じてきます。とくに脳梗塞や心筋梗塞が問題です。 「脳卒中」という言葉がありますが、これは「脳出血」「脳梗塞」「クモ膜下出血」の3つの病気の総称です。このうち脳出血と脳梗塞が、コレステロールと深く関係しています。 コレステロールが不足すると、血管が弱く、破れやすくなります。つまり脳出血を起こしやすくなるのです。戦前から戦後にかけて、日本は食料事情がたいへん悪く、脂肪分の乏しい食事を摂っていたため、脳出血が非常に多かったことが知られています。 しかし食料事情が改善されて、脂肪分を豊富に摂れるようになると、日本人の血管も少しずつ丈夫になってきて、脳出血は急速に減りました。代わりに増えてきたのが脳梗塞です。コレステロールが過剰になると、血管が動脈硬化を起こして詰まりやすくなるからです。ついに1990年代に至って脳出血と脳梗塞が逆転し、いまや脳卒中の代表格と言えば脳梗塞という時代になっています。 この血管の丈夫さや動脈硬化と、LDL・HDLコレステロールが深く関わっています。とくにLDLコレステロールが過剰でHDLが少ないと、動脈硬化を起こしやすくなり、それが脳梗塞の主な原因であることが明らかになってきました。
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)