[MOM4930]堀越MF小泉翔汰(3年)_選手権の悔しさは選手権でしか返せない。結果にこだわる「左の翼」が2ゴール1アシストで決勝進出の立役者に!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.10 選手権東京都予選Bブロック準決勝 日大豊山高 1-5 堀越高 味の素フィールド西が丘] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 あの時に味わった悔しさは、今でも心の中にはっきりと残っている。チームが躍進していく中で自分だけが取り残されていくような、あんな感覚はもう二度と味わいたくない。今度こそアタッカーとして納得のいくような結果を残して、誰よりもピッチで輝いてやる。 「去年の選手権では結果を残せずに悔しい想いをしてきたので、この高校最後の大会で、しかもこの西が丘という会場で結果を残せたのは、自分にとっても大きいと思います」。 東京連覇を真剣に目指す堀越高が誇る、アグレッシブな左の翼。MF小泉翔汰(3年=東京杉並ソシオFC U-15出身)が西が丘の舞台で披露した2ゴール1アシストの活躍は、この1年間でたどってきた確かな成長を証明する、大事な、大事な結果だった。 日大豊山高と対峙した高校選手権東京都予選Bブロック準決勝。春の関東大会予選では同じ準決勝で敗れた相手とのリターンマッチ。堀越の選手たちは前半の序盤からアクセルを全開に踏み込み、フルスロットルで立ち上がる。 前半6分。FW三鴨奏太(2年)のスルーパスでFW高橋李来(2年)が右サイドを抜け出すと、狙うポイントはすぐさま共有される。「最近は右サイドを誰かが駆け上がったら中に入ることを意識していて、そこで入っていったところにマイナスのボールが来た感じです」(小泉)。1本目のシュートはDFに阻まれたものの、こぼれ球をすかさずゴールへ蹴り込む。 「『あ、来た!』『ヤバい、外した!』『あ、でもこぼれてきた!』みたいな感じでした。ウチは最初に先制できれば勝てる試合が多いので、そういう意味でも良い流れを作れたのかなと思います」。小泉の先制弾で堀越がまずは1点をリードする。 前半25分。MF渡辺隼大(3年)の豪快なミドルで点差を2点に広げていた中で、再び小泉に決定機が巡ってくる。右サイドでボールを持った三鴨は、完璧なラストパスを相手ディフェンスラインの背後へ。「三鴨が前を向いた時に目が合って、走り出したら本当に良いところにボールが来たので、ファーにひねって打とうとはイメージしていました」という小泉の強烈な右足シュートは、左スミのゴールネットへ一直線に突き刺さる。 「いいところに飛んでいきましたね。(渡辺)隼大が良いゴールを決めて、『アイツ、やったな』と思っていたので(笑)、そこで自分が追加点を獲れたことも良かったです」。これで18番はドッピエッタ。チームも前半だけで3点のアドバンテージを手繰り寄せる。 後半37分。4-1とリードして迎えた最終盤。途中出場のキャプテン、DF竹内利樹人(3年)から正確なサイドチェンジが届くと、小泉は積極的なプレーを選択する。「試合を通してあまり縦に突破する場面がなくて、カットインしてクロスが多かったので、『ここで仕掛ければ何か起きるかな』と思って、縦に行ったら良い感じに抜けましたね」。縦突破から丁寧なグラウンダークロスを送り込み、FW千葉慎之助(2年)のゴールをアシストする。 「左足のクロスは得意なので、ディフェンダーとキーパーの間に流すイメージで、そこに誰かがいたらいいなというイメージでした。あれは得意な形というか、ちゃんとディフェンダーの前に入って無力化させたので、倒されたらPKですし、良いドリブルのコースを作れたのかなと思います」。ゴールショーを締めくくる完璧なアシスト。終わってみれば5-1という快勝を収めたチームの中で、3得点に絡む活躍を見せた小泉は、この西が丘という晴れ舞台で見事に主役の座をさらっていった。 昨年度の選手権予選では初戦こそ得点をマークしたものの、以降はノーゴール。迎えた全国大会では準決勝までの全試合でピッチにこそ立ったものの、出場時間は残り10分前後の途中出場。チームが勝ち上がっていく中で、なかなか思うような結果を出せない現状に、小泉は何とも言えない感情を抱えていた。 「去年は年間を通して、あの選手権という大会が自分としては一番悔しかったです。もちろんチームとして勝ったことは嬉しかったですけど、アタッカーとして自分が何も結果を残せずに、でも、チームは勝ち上がっていくというのは非常に悔しかったですね」。国立競技場で戦った準決勝では最後まで出場機会は訪れず、チームも無念の敗退。消化不良のままで小泉の選手権は幕を閉じることになる。 最高学年となる今シーズン。もともと武器だったドリブルのさらなるレベルアップと並行して、以前から自身もウィークポイントだと感じてきた部分にも、しっかりと目を向け、トレーニングにも向き合ってきたという。 「去年は欠点だった競り合いのところも自分なりに意識して練習してきたので、準々決勝の修徳戦ではゴールキックでGKの佐藤晴翔から自分のところへ飛んできたボールに、全部競り勝つことができたんです。今は競り合いも1つの強みになっていますし、そこは去年と違って成長している部分かなと思います」。 迎えた今大会は得点を量産。初戦の東高戦で2ゴールをマークすると、2回戦の日大三高戦では1点をリードされていた後半のラストプレーで執念の同点ゴールを叩き出し、チームの逆転勝利に大きく貢献。加えてこの日も2得点を記録するなど、今季に入ってとにかく突き詰めてきた『結果を出すこと』で、逞しくアタッカー陣を牽引してきた。 去年から背負っている“18番”には小さくないこだわりがある。「中学校の時もそうでしたし、1年の時の選手権やTリーグも18番を着ていて、2年の最初に7番を付けていたんですけど、結局やめて18番に戻しました(笑)。自分的に18番は特別な番号というか、慣れている番号という感じがしますね」。 そんな慣れ親しんだ18番のユニフォームとともに挑む東京ファイナル。ここまでの試合で小さくない自信を纏いつつある小泉は、重要な一戦に向けての目標を力強く言い切った。「もちろんチームが勝つのが一番ですけど、自分が結果を残して勝てたら一番良いですね。今日も3点目を獲るチャンスがあったので、目標としてはできれば3点獲りたいです!」 突き付けられた悔しさも、みんなで共有してきた歓喜も、すべては次の1試合に勝って、全国の舞台へと戻るための過程。努力を積み上げることで明確な結果を残してきた、サイドを切り裂く堀越の左ウイング。小泉翔汰は決勝のピッチでも、とにかく積極的に前へと突き進みながら、チームに勝利をもたらすゴールを狙い続ける。 (取材・文 土屋雅史)
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