ツーリスト・トラップ編(2)日本人の〝一般的な生活を垣間見たい〟訪日客 安直「おもてなし」に辟易、望む「カジュアル・トラベラー」
【列島エイリアンズ】 訪日外国人が日本の旅先の感想をSNSやインターネットの掲示板などに記す際、「ツーリスト・トラップ」と書き込むケースが続出している。「がっかり観光スポット」全般を指すこの言葉に込められているのは、ぼったくりや悪質サービスへの不満だけではなく、安直な「おもてなし」に対する辟易もあるようだ。 東京で、多くの訪日経験のある外国人から「ツーリスト・トラップ認定」を受けている豊洲千客万来(東京都江東区)は、その好例だ。内外装は江戸の街並みを再現しており、野外エリアに川越(埼玉県)の「鐘つき堂」を模したような櫓(やぐら)が設けられ、時折「忍者ショー」などのイベントも催されている。 数年前であれば、まさに外国人が喜びそうな演出が盛りだくさんのスポットだ。しかし、彼らのマインドが刻々と変化するなか、時代遅れ感が否めない。 そのことは日本政策投資銀行と日本交通公社がアジア・欧米豪からの訪日客を対象に実施したアンケート「訪日外国人旅行者の意向調査」(2023年度版)の結果にも顕著に表れている。 同調査の「訪日旅行で体験したいこと、体験したこと」という項目の第1位は、「自然や風景の見物」で全体の60%以上が回答。それに「桜の鑑賞」「伝統的日本料理」が続く。上位10位までをみても、8位の「世界遺産の見物」以外、日本人が日常的にやっている活動ばかりだ。 ベストテン外ではあるが、筆者が注目したのが12位の「現地の人が普段利用しているカジュアルな食事」という回答。というのも、ここ数年、ネット上の英語による旅行関連の投稿に「カジュアル・トラベラー」という言葉が散見されるからだ。 この言葉には明確な定義はないが、「現地に溶け込むように旅をする人」という意味で使われることが多い。そんな旅のスタイルは、訪日旅行者にも浸透しつつある。 「リアル&カジュアル」――。 これが今、多くの外国人の訪日観光に共通するテーマといえるだろう。 =つづく