「先の見えない恐怖を味わった」──濃厚接触を避けられない訪問介護の現場から【#コロナとどう暮らす】
「新しい生活様式」との折り合い
5月7日、専門家会議が提言する「新しい生活様式」が示された。手洗いや身体的距離確保といった基本的な感染対策の実施、「3密」の回避のほか、食事のときは横並びでおしゃべりは控えめにする、テレワークや時差通勤の推奨といった、日常生活における具体例が上げられている。 一方、福祉・介護の現場では、接触を伴うサービスが避けられない。Yahoo!ニュースにはこんな不安の声が寄せられた。 「防護服をつけて仕事するわけにもいかず、密にならないわけにもいかず。ワクチンや医療体制が整わない状態での共存はこわいなと思います」 「介護福祉士です。自粛解除されて面会できるようになった場合の家族からの感染が脅威です」 ──「3密を避ける」とか「接触8割減」といったスローガンは、介護の実態とどうしても相性がよくないように思うのですが。 「3密を避ける」と言われはじめたときに、介護現場はすぐに反応しました。個々のヘルパーや障害者が過度に不安にならないように、きめ細かく指示を出したり、考え方を伝えるお知らせを出したりということは、どの事業所でもやっていたと思います。 私が関わっている障害福祉の事業所は、障害者自身の意思や自由を大事に考えています。たとえば、事業所やヘルパーの都合で障害者が行きたいところに行けないとか、会いたい人に会えないのはおかしい、と考えるんです。 そういう事業所ですから、「感染予防はもちろん大事だけど、その中でも、障害者自身の意思を尊重し、生活をなるべく変化させないように、お互いに対応しながら進めてほしい」という方針を、かなり早い段階から示していました。障害者も介助者もどちらも不安だし、どうしたらいいか考えながらやっていきましょう、と。そういった事務所のスタンスを信頼できたので、私はあまり迷わずに介助を続けられたと思います。ありがたかったですね。 もちろん、事業所によっていろんな考え方があるでしょうし、中には買い物などの外出を控える方針をとった事業所もあったと聞きます。が、私はやっぱり、事業所には高齢者や障害者のふだんの生活を維持していく責任があると思います。だからこそ、みんな悩みながら、どうやって感染を予防するのか、リスクと自由や権利のバランスをどうするのかということを、いろんな現場で考えて、話し合ってきたと思う。