「女の子なのに算数が好きなんだ」と子どものころに言われ 犬山紙子が娘の「ジェンダー教育」に力を入れる理由
■心のケアについてはカウンセラーを頼ったほうがいい ――実際には、親がいつも子どものそばについて性被害から守るということは難しいと思います。親の介入についてはどうお考えでしょうか? たとえば私自身、痴漢に遭う経験をしましたが、子どもには絶対に痴漢に遭ってほしくないんです。だからといって、電車通学を禁じるのかといえば、禁じることはできません。そこはやっぱり子どもの学びたい気持ちに忠実に、もし電車通学で行きたいところがあれば制限したくない。となると、痴漢に遭う可能性はどうしてもあるわけです。そうなったときに親としては性教育をして、痴漢にあった方は何も悪くないことを伝えることと、傷ついた心は臨床心理士などのプロに頼る大切さを伝えることが必要なのかなと思います。自衛について教える時は「自衛しなきゃいけない社会がおかしいのだけど」「自衛できなかったとしても、それは何の落ち度でもない」ということをセットで伝えようと思っています。 カウンセリングは私自身もお世話になりましたし、知見のある方に話を聞いてもらえることはとても救いでした。行きつけのカウンセラーを見つけて、子どもも抵抗なく受けられるような土台作りは、親がしてあげられることの一つではないかと思います。また、私が今まで取材をして得たことや、精神的に不調を抱えたときに得た知識はシェアできると思います。今も、娘が悲しそうにしていたり、友だちとケンカしてつらそうだなというときには、「再評価」というネガティブな気持ちとの付き合い方を伝えたりしています。拙著『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』を書き進める中、小児精神科医の内田舞先生に教えてもらった方法です。 性被害に限らず、友だちのつき合い方や傷ついたときの対処法など、子ども向けの心のケアについては良書がたくさん出ているので、それも心強いですね。 ――犬山さんご自身が子どものころにそういった心のケアに出会っていたら、捉え方なども違ったと思いますか? それはすごく思います。たとえば性被害に遭うと、“自分は価値のない人間だ”、“自分は汚い”という方向に考えてしまいがちなんですよね。思春期のルッキズムについても、大学生のころ、自分の見た目に悩んで生理が止まるレベルの無理なダイエットをしてしまったことがありました。そういうときにプロに頼るという選択肢があって、正しい知識を身につけていたら違っただろうというのはすごく感じます。