鹿島のVシナリオを崩した不可解ジャッジ
お互いに手堅い試合運びとなると予想された大一番。鹿島としては浦和を無失点に封じたうえで、最低でも引き分けに持ち込んで、12月3日に敵地・埼玉スタジアムで行われる第2戦に臨みたい。 前線から連動したプレスと、激しい球際の攻防。リーグ最強を誇る川崎の攻撃陣をシャットアウトした堅守が効いていただけに、試合後に自らの目で映像をチェックし、ごく普通のボディコンタクトだったと確信した昌子は納得がいかない。 「負けてからレフェリーのことを言うと、言い訳でしかないからね。あまり言いたくないんですけど、それでも誰がどう見てもジャッジは不公平だったと思う。(西)大伍君と(興梠)慎三さんが倒れた瞬間に笛を吹いて、躊躇なく『PK』と言ったから、よほど自信があったんだろうけど。まあ、そういう部分を含めて負けは負け。自分たちが弱いから負けた、ということに尽きる」 ホームのアドバンテージを得られる状況にもほど遠かった。空席が目立ったスタンドは、特にゴール裏の2階席はまばらな観客を数えられるほど閑散としていた。入場者数は2万3074人。カシマスタジアムの収容人員が4万728人だから、約56%しか埋まらなかったことになる。 集客ナンバーワンを誇る浦和でさえも、平日のナイトゲームは動員で苦戦を強いられる。加えて、準決勝の結果を受けて4日前の25日に一般販売が始まったことも、第1戦の前売りチケットの売れ行きの鈍さに拍車をかけた。 対照的に11月3日の段階で年間総合順位の1位を決め、決勝第2戦を行う日時の告知に時間を取れた浦和のチケットはすでに完売。超満員の大声援が、10年ぶりとなるJ1王者獲得を後押しする。 それでも昌子は自軍のゴール裏をチームカラーの深紅に染め、声を枯らして応援を続けてくれたファンやサポーターに感謝する。少ないとはいっても、2万3074人は今シーズンでは5番目に多い数字だった。 「午後7時半開始でしかも平日で、交通の便などを考えるとカシマスタジアムは難しいけど、それでも熱い応援は聞こえていた。僕たち選手やスタッフはもちろんですけど、ファンやサポーターの誰一人としてあきらめていない、という応援だったので、それは次への好材料なのかなと」 実際、奇跡への可能性を繋ぎとめてもいた。1点を追う展開で、時間の経過とともにリスクをかけて攻めていったなかで、昌子はセンターバックを組む元韓国代表のファン・ソッコとこんな声をかけあっていた。 「この1点差をキープするぞ」