SNS戦略が奏功 奇跡のアニメ『キンプリ』上映館数減でも大ヒットの理由
ヒットの最大の要因は“ファンの愛”
作り手の思いが熱狂的ファンにある行動を起こさせるようになる。 「ずっと応援してくれていた人が、『面白いものがあるから』と周囲の友達などを映画館に連れて行ってくれたんです。そして、その人たちが映画館から出てくると『世界が輝いてみえる』とか『モヤモヤしていたけれど、すっきりした』とか『肩こりがとれた』ということをSNS等で発信してくれて、それを見た人が『なんなんだろう』と興味を持ってくれる……という形でネズミ算式に広がっていったんです」と西プロデューサーは振り返る。 「とにかくファンの方たちのおかげ」と何度も口にしていた西プロデューサー。さらに「宣伝費もほとんどない状態だったので、ツイッターをはじめとしたSNSの力は大きかったです。当時の宣伝担当が、できることをすごく丁寧にやっていただいていたのもありがたかった。大きな攻撃力がない竹槍集団です」と笑っていたが、地道な努力も大きな花を咲かせる要因になった。 上映館数が減ったところでの逆襲のタイミングなど、菱田監督、西プロデューサーが「奇跡」というような、偶発的な出来事が重なったという事実はあるが、制作側がファンの期待に応えたいという思いで映画作りを行い、出来上がったものをファンは受け入れ、その良さをほかの人に伝えようとする――という形は、ものづくりを真摯に取り組むことによって成し遂げた必然といえるだろう。 (取材・文・写真:磯部正和)