SNS戦略が奏功 奇跡のアニメ『キンプリ』上映館数減でも大ヒットの理由
ヒットの裏にSNS戦略
しかし、菱田監督がツイートした頃から風向きが変わったという。 「『もう少しで上映が終わるので、後悔しないようによろしくお願いします』とツイートしたんです。そうしたらファンの方たちが今まで以上にSNS等で一生懸命拡散してくれて、同じ頃に初めてキンプリを見た方のレポ漫画が話題になり始め、徐々に広まっていったんです」 さらに上映館数および回数が少なくなったことが追い風になった。 「観られる場所と時間が限られているから、そこに人が集まってくださって、満席という状況が続き、徐々に話題になっていきました」と西プロデューサー。そこからは大きな広がりをみせ、2か月後の3月9日には興収2億5000万円を突破した。この状況に「物語ではいろいろと奇跡を描いてきましたが、リアルに奇跡が起こるのは初めて」と菱田監督も興奮を隠せなかったという。
“応援上映”を意識した作品づくり
ヒットの最大の要因となっているのは「ファンの方々の愛」だと西プロデューサーは断言する。 「自分たちのことのように必死に作品を広げようとしてくれていました。そういう活動を見ているだけでも泣けてきてしまう。お客さんというよりも、みんな仲間みたいな感じなんです」。 菱田監督も「本当に作品を愛してくれていることが嬉しかった。だから僕はとにかく舞台挨拶などは全部行って、観に来てくれた人に『ありがとう』という気持ちを伝えたいんです」としみじみと語る。 もちろん、そこには観客に楽しんでもらおうという制作側の熱意がある。その一つが“応援上映”という劇場鑑賞の形を意識した作りにもある。 “応援上映”とは簡単に言ってしまえば、映画上映中、声援を送ったり、サイリウムを振ったり、静かに座って映画を楽しむという従来の概念を覆すような特別上映のことだが、 「そもそも応援上映というのはほかの映画でも見受けられるもので、特別珍しい興行ではありません。『キンプリ』より前に、同シリーズ作品の『劇場版 プリティーリズム』や『劇場版 プリパラ』でも応援上映はやっていました。そのころからのファンの方たちが、どんどん面白い形にアレンジしてくれたんです」と菱田監督は語る。 こうした過去の応援上映の経験を踏まえ『キンプリ』シリーズでは、さらなる趣向を凝らせたという。 「前作では、字幕を入れてセリフを入れないシーンを作ったんです。会場に来たお客さんにアフレコをして楽しんでもらおうという趣旨です。さらに前作では、お客さんのなかにはアクションをする人も増えてきたんです。いわゆるサイリウム芸というものですが、今作はそういうお客さんにも楽しんでもらえるようなシーンも入れています」