「選択的夫婦別姓」求め集団訴訟 最高裁は過去2度「合憲」判決も…「多くの学者によって批判されてきた」
国の反論内容は?
対する国側の反論について、原告側弁護団によれば、基本的に2015年と2021年の最高裁判決をなぞった内容だといい、「今回の訴状に正面から向き合っていない」と弁護団は批判している。 具体的には「夫婦が同氏を名乗ることは社会の構成要素である家族の呼称としての意義がある」「どちらの氏を称するかは夫婦の協議により選択可能であり不平等には当たらない」「旧姓の通称使用の拡大によって不利益が緩和されている」と主張しているという。 その他、今回の訴訟独自と思われる主張は、以下の3点。 ①夫婦同氏の目的は、共同生活の実態の表現、家族の一体感の醸成ないし確保にあり、それは社会全体が夫婦同氏によって達成し得る ②婚姻制度の柱は嫡出子の仕組みであり、両親と子どもが同じ姓を持つつながりを持った存在としての嫡出子としての意義を重視すべきだ ③内閣府の世論調査(2021年)では「夫婦同氏制度を維持した方がよい」という回答と「旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」という回答を合計すれば69%になるから、夫婦別氏を是認する見解が大勢とは言えない 原告弁護団で団長を務める寺原真希子弁護士は、20日の口頭弁論後に行われた報告会で、こうした国の各主張に対し反論を行った。 「(①について)ある家族の一体感が他の家族が同氏でないと醸成できないという理屈は正直、意味不明だ。すでに事実婚の家族など別氏夫婦、別氏親子が多く存在している実態も無視している」(寺原弁護士) また、②親と子どもが同じ姓を持つことの意義について寺原弁護士は、「これまでの最高裁の判断を踏襲したものだが、最高裁の判断自体多くの学者によって批判されてきた」と説明。「嫡出子か非嫡出子かを氏が同じかどうかで区別して、周りから見えるようにするという差別的な扱いを支持している。日本にも多くいる非嫡出子を守るべき国が、非嫡出子に対する差別を助長しており、大きな問題があると言わざるを得ない」と批判した。 ③旧姓の通称使用を法制度化することについては、あらためて「通称使用の法制化が解決策になり得ない」と主張し、通称使用の限界と問題点から目をそらすものだと訴えた。 報告会に参加した原告らからは、国が時代の変化による「事情変更」を無視していることに失望する声が上がった。また、通称使用で不便を強いられている実態や、その実態に向き合っていない国の姿勢に怒りをにじませる人もいた。一方、自民党総裁選でも選択的夫婦別姓が論点となっていることに対し、与党内でも理解が進むことを期待する声もあった。 寺原弁護士は、裁判の今後について、「裁判官は過去の判例をできるだけ変えたくないものだが、今回は2度の最高裁判決をねじ伏せる必要がある。しかし、この訴訟で問うているのは、男女差別や個人の尊厳を守るという人権問題がその本質だ」と語り、「裁判官にもその本質に立ち返ってほしい」と訴えた。
杉本穂高