「僕は死にたくない側の人間」と言う秋山黄色

　「毒気」を含んだ独創的な詞で、生きる意味を問い続けるシンガー・ソングライター秋山黄色（28）が、4枚目のアルバム「Good Night Mare」をリリースした。「人並外れた不安症だった」という秋山がもがきながら紡いだ言葉が輝きを放ち、胸に刺さる。11月8日に福岡市でライブを開催予定。 【写真】「Good　Night　Mare」のジャケット 　中学生の頃、テレビアニメ「けいおん！」に憧れてベースを手にした。高校に入学すると軽音楽部に入部した。アニメで描かれたような青春ドラマはなくて「こんなもんなんだ」と思ったが、オリジナル曲を制作するうちに、音楽に没入していった。 　幼い頃は「気持ちとエネルギーがあれば何にでもなれる」と思っていたが、成長するにつれて「自信満々で生きていくのが怖い」という不安を抱くように。そんな気持ちを表現するには、詞をメロディーに乗せて耳に届ける音楽が最適だと気づいたという。 　2017年から、出身地の宇都宮市と東京を中心にライブ活動をスタート。20年にメジャーデビューを果たし、映画「えんとつ町のプペル」の挿入歌や、アニメ「約束のネバーランド」のテーマソングなどで注目を集めてきた。 　歌詞へのこだわりが強く、対置表現を好んで使う。 　「優しい人は自由になれないけど　不自由に慣れる事も　愛と呼べる人間でいたいよ」（Lonely cocoa） 　「『なんにでもなれる』と思ってた　ただ『なりたい自分』が曇ってた」（SCRAP BOOOO） 　「ねえどうしてどうして　思い切り生きるほどに死にたくなんの？」（FLICK STREET） 　今回のアルバムタイトルにも二つの意味を込めた。 「Good /Night Mare」（いい悪夢を）と「Good Night /Mare」（おやすみ夢魔）。人は悪夢を見て飛び起きることもあるし、現実世界で絶望して「夢ならよかったのに」と思うこともある。そんな世界を見させる「夢魔」を眠らせたいと願う。 　生と死について表現することが多いが、「僕は死にたくない側の専門家。生きることとは何なのか、自分自身も悩みながら問いかけていきたい」と言う。自作のライナーノーツにはこう書いている。「世界は悪夢そのものだ　ならとりあえず最初に見た良い夢を　悪夢に変えるほど良い現実にしなきゃな」 （加茂川雅仁）

■秋山黄色 NON－REM WALK TOUR

　11月8日午後7時から、福岡市中央区舞鶴の「DRUM LOGOS」で。5500円（別途ドリンク代）。問い合わせはキョードー西日本＝0570（09）2424。