【日本はもはや「お買い得」の国】日産買収に動いた台湾・鴻海、「ホンダ・日産」が試金石となる理由
「品質の割にお安い」
日本の強みは中流層の分厚さであり、貧富の格差の小ささであるので、トータルとして日本の豊かさがまだそこまで落ちぶれたわけではないというのが実感だが、すでにほとんどリードはなくなっており、あと5年もすれば追い抜かれて彼らの背中も見えなくなりかねない。 先日もある台湾の政治家から、台北市の建国南路にある「二階」という寿司店にランチで連れていってもらった。最近の台湾の日本食では寿司のレベルアップが著しい。日本から取り寄せたネタと台湾で獲れたネタを組み合わせながら、若手の30代から40代ぐらいの寿司職人がどんどん新しい店を開いている。 彼らの特徴は、お客さんの数をあらかじめ予約でフィックスしておいて、時間通りに、一種類ずつ、先付けや刺身、椀ものを組み合わせながら、効率よくベルトコンベアーのように寿司を出していくところだ。それで値段を抑えているので、若い人たちでも気軽に食べにくることができていた、と理解していた。 ところが、この二階という店を含めて最近台湾の寿司店を食べていると、ランチで2000元(約1万円)、夜になると3000元、4000元が当たり前になっている。円安のせいもあり、いつのまにか日本で寿司を食べるのと同等か割高感があるように感じる。 こうした台湾の人たちが日本に来て、銀座や築地で寿司を食べている時にたまたま同席することもあるのだが、美味しい美味しいと喜びながら、最後の一言は「划算(ホアスワン)」という感想を漏らすことが多い。これは「品質の割にお安い」という時に使う言葉で、「こんなに美味しいのに安いわー」と喜んでいるのである。 日産株も、ホンハイからみれば「本来の価値の割にはお安く買える」と思われていることは間違いない。ホンダ・日産の連合が日本企業復活の一里塚になればいいが、失敗した場合は、さらに安く買い叩かれるか解体の憂き目にある恐れもある。
野嶋 剛