メタ発言が炸裂した『おむすび』第7週 “誰かを喜ばせたい”にこれまでの経験が集約する
『おむすび』(NHK総合)第7週「おむすび、恋をする」 は、結(橋本環奈)の学年が高校生活最後の夏へと一瞬で飛び、さらにその半年後、一家で再び神戸へと旅立とうとする直前のタイミングへとワープする、展開の速い週である。第1話で結が放った「うちは朝ドラヒロインか?」と同じメタ的ツッコミが第7週でも炸裂しつつ、結、愛子(麻生久美子)、聖人(北村有起哉)、佳代(宮崎美子)がアイコンタクトを超えて、心の声で会話をするという、これまたぶっ飛んだ演出を施しながらも、週全体としては、結の恋人となる翔也(佐野勇斗)との恋愛を通じて結が栄養士を志し、再び聖人が神戸で床屋を営もうとするまでを描いている。 【写真】『おむすび』第8週から登場する新キャストたち(全7名) 第35話の始まりは、結が愛子、聖人に初めて「栄養士になりたい」という夢を告げるシーンからスタートする。動機のきっかけにあるのは、「自分がやったことで誰かが喜んでくれたら、幸せな気持ちになれる」という思い。震災でのつらい記憶の中でもらったおむすび、先述した第1話での結が少年の帽子を取るために海に飛び込んだこと、さらに糸島フェスティバルでのパラパラのステージ、翔也への弁当作り。一見、バラバラのように思えても、そこには「一生懸命やってる人を支える、そういう幸せが自分に向いてる」という結にとっての栄養士に繋がる気づきがあった。『おむすび』のメインビジュアルは、おむすびをもらった結の原体験の場となるロケ地の教室で撮影されている。結が差し出しているのは、ハート(心)のこもったおむすび。今度は栄養士になった結が幸せとともにおむすび(栄養)を届ける、と捉えられる。 佳代も神戸への引っ越しを優しく受け入れてくれる中、立ち塞がったのは永吉(松平健)だった。「親父には俺からタイミングを見て話す」と聖人が息巻いてから半年。永吉が結たちの神戸への引っ越しを知るのは、米田家に突如訪ねてきた“バカ河童”こと翔也の「米田結。神戸に引っ越す日、決まったか? 俺、手伝うから」という、空気の読めなさ過ぎる一言からだった。ルーリー(みりちゃむ)たちハギャレンメンバーといい、米田家のセキュリティ甘すぎないか(田舎はそういうところもありはするが)というツッコミどころもありはするが、そこからラスト4分で感動モードへと物語は舵を切っていく。 糸島のシンボル・可也山を望む米田家の畑で結が永吉に伝えるのは、糸島の全てが大好きだという思いは変わっていないこと。その思いは同じはずだと結は聖人の代わりに永吉へと告げる。頑として永吉が結たちの神戸行きに反対するのは、「お前らがおらんくなったらつまらん」という素直な思いからだった。永吉にとっては食卓を囲んで、ナイターを見ながら、くだらない話に笑ったり、喧嘩して怒ったりする日々が楽しかった。日々の生活が音を立てて崩れ落ちて行った、1995年1月17日。家族と過ごす何気ない日常の大切さ、そこにある幸せを痛感したからこそ、永吉にとっても震災を忘れたくないという思いがあったのかもしれない。11月8日放送の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に出演していた北村有起哉は、今後の展開について福岡を離れることはなく、定期的に訪れることになると話していたが、それは夏休みも冬休みも春休みも、ゴールデンウィークも、年末年始も必ずまた故郷・糸島に遊びに来るという結と永吉との約束を指したものだ。いつでもそこで帰りを待ってくれている、そのことが結たちにとっての支えでもある。 糸島から神戸へと舞台を移す第8週からは新キャストが続々と登場。栄養士を目指し神戸栄養専門学校に通う結と並行して、大阪の星河電器に就職し、社会人野球選手として夢を追う翔也の物語が描かれていくようだ。
渡辺彰浩