Bye-Bye-Handの方程式のより明るい未来を予感させたロング・ツアーの大団円【オフィシャルレポート】
今年5月22日に1stフル・アルバム『ソフビ』をリリースし、6月28日から同作を携えた全国ツアー『Soft Vinyl Human Tour』へと旅立ったBye-Bye-Handの方程式。同ツアーは6月から8月にかけて2バンドをゲストに迎えて各地をまわった後、9月から“FINAL SERIES”と銘打ってツーマン形態の東名阪ツアーを行うというスケジュールで、Bye-Bye-Handの方程式史上最大(全16公演)のロング・ツアーとなった。ライブの本数が多いことと多くのバンドと同じステージに立つことが相まって、Bye-Bye-Handの方程式のメンバー達が様々な刺戟を受け、ツアーを通して沢山のものを得られたことは想像に難くない。 【全ての画像】『Soft Vinyl Human Tour -FINAL SERIES-』ライブ写真 そんな『Soft Vinyl Human Tour』のファイナル・ギグが9月29日に東京Spotify O-Crestで行われた。同公演は山本珠羽(g / vo)、杉田崇(ds)両名からなるUNFAIR RULEを招いて開催。今回のツアーが充実したものだったことを表すようにSpotify O-Crestには多くのリスナーが集まり、熱気に包まれた中でのライブとなった。 Bye-Bye-Handの方程式に先立ってステージに立ったUNFAIR RULEのライブは抒情的な前半から激しい後半へと移行する「if」で幕を開けた後、パンキッシュにハジケる「嘘」と「馬鹿みたい」を続けて聴かせる流れからスタート。ドラマチックなライブ構成や力強さとエモさを併せ持ったボーカル、生々しさに溢れたサウンド、フィジカルなステージングなどでオーディエンスの心を一気に鷲づかみにしたのはさすがといえる。 その後はメロディアスな「ラストソング」やエモーショナルなボーカルをフィーチュアした「大阪」、せつなさを纏った「うた」などが届けられた。“静と激”のコントラストを活かしたアレンジや楽曲に寄り添って表情を変えるフレキシブルなボーカル、絶妙なダイナミクスが光るドラムなどを活かして、それぞれの楽曲を強く響かせる手腕はさすがの一言。サポート・ベーシストを加えたトリオ編成というミニマムな編成とは思えない立体的なサウンドも魅力的で、深く惹き込まれずにいられなかった。 ライブ後半では繊細な導入部とパワフルな後半という二面性を押し出した「曖昧」と、力強く疾走するサウンドに乗せて山本が「自分が生きる場所は、ここライブハウスしかないんだ!」と熱く語る「非行少女」をプレイ。オーディエンスの様々な感情を突いた後、激しくいき上げる流れが決まって、場内は盛大な盛り上がりを見せた。 シンプルなメンバー編成で深みのある世界観を構築する秀でたスキルとライブ映えする爆発力を備えたUNFAIR RULEは非常に魅力的な存在といえる。10月16日(水) に1stフル・アルバム『ひとりごと』がリリースされることも含めて、今後さらなるスケールアップを果たすことを予感させられるステージだった。 UNFAIR RULEのライブから短いインターバルを経て、暗転した場内にオープニングSEとして「#1090 ~Million Dreams~」(松本孝弘)が流れ、Bye-Bye-Handがステージに登場。客席から歓声と拍手が湧き起こり、ハイテンションかつ爽やかな「ラブドール」を皮切りにパンキッシュな「swamp(沼)」や「風街突風倶楽部」などが続けざまに演奏された。 ステージ中央に立ち、ギターをかき鳴らしながら熱い歌声を聴かせる汐田。オープニングからフィジカルなステージングを織り成して、ソリッドなバッキングやホットなギター・ソロを決める岩橋。明るい笑顔と凄みに満ちたドライブ感を放つ重厚なベース・サウンドのマッチングが魅力的な中村。パワフルかつシュアなドラミングでバンドのグルーブを牽引していく清弘。4名それぞれが個性を発するアクティブなシーンと爽快感に溢れたサウンドの連続に、オーディエンスのボルテージはどんどん高まっていった。 「あらためまして、Bye-Bye-Handの方程式です。よろしくお願いします! ツアー・ファイナルです、ありがとう! 無事に16本まわって、この渋谷O-Crestにたどり着くことができました。本当に、ありがとう!」という汐田のMCを挟んだ後、セカンド・ブロックでは「閃光配信」や「daring rolling」「ソフビ人間」などをプレイ。ライブが始まると同時にライブ終盤を思わせる熱演を見せ、それがずっと持続される彼らのライブは本当に魅力的だ。また、メンバー全員が全力でパフォーマンスしていながらサウンドが常にタイトなことにも圧倒された。 場内が終始良いムードで盛り上がる中、「妖艶さん」でベースの音が出なくなるというハプニングが発生。中村自身も含めたメンバー全員が少しも慌てることなく和やかなMCで繋いだのはさすがだし、ベースの音が出るようになった瞬間、「じゃあ、1曲追加するわ!」と言って「熱帯夜と遊覧船」を演奏し、それを“ビシッ!”と聴かせたことには驚かされた。この辺りからも今回の『Soft Vinyl Human Tour』を通して、Bye-Bye-Handの方程式がより逞しさを増したことが実感できた。 ライブ中盤では岩橋のスリリングなギター・ソロや中村のスラップ・ベースなどをフィーチュアした「タヒ神サマ」、温かみに溢れた「甘い記憶」、華やかさとせつなさがない交ぜになった“春感”を巧みに表現した「春のチャンス」などが届けられた。突進力を押し出したライブを行いつつ、こういったナンバーをしっかり聴かせるのも実に見事。単なるライブのチェンジ・オブ・ペースに終わらせることなく、“エモーショナルなBye-Bye-Handの方程式”でもオーディエンスを魅了する姿が印象的だった。 「誰かにとっての一方的な正義は誰かにとって悪になったり、意地悪になったりする時はあるけど、ただただ傍にいてくれて、ただただ目を見てくれて、ただただ話を聞いてくれる。そんな友達とか、大切な恋人とか、家族とか、そんな言葉にあてはめられないような誰かみたいに、みんなを音楽で包めたらなと思って今日も歌います」という汐田の言葉と共に届けられたウォームな「やさしいひと」を経て、ライブは後半へ。再びパワフル・モードにシフトして、パンキッシュかつキャッチーな「midnight parade」と「ロックンロール・スーパーノヴァ」が演奏された。最終盤まで全くパワーダウンすることなく全身全霊で演奏するメンバーの姿と気持ちを引き上げるサウンドにオーディエンスは熱気と一体感に満ちたリアクションを見せ、Spotify O-Crestの場内はロング・ツアーのファイナルにふさわしい怒涛の盛り上がりを見せた。 自分たちにとって過去最長のツアーを行い、そこで得たものを遺憾なく発揮する上質なライブでツアーを締め括ったBye-Bye-Handの方程式。“みんなで一緒に楽しもう!”という気持ちを打ち出した彼らのライブは心地よさに溢れているし、バンドとしての表現力やライブの持っていき方などに更なる磨きがかかったことは注目といえる。今回のライブに触れて、“Bye-Bye-Handの方程式は、もっと大きな会場でもこの空間を生み出すことができる”という確信を得たこともあり、今後の彼らの動向にも大いに注目していきたいと思う。 Text:村上孝之 Photo:かい <公演情報> Bye-Bye-Handの方程式『Soft Vinyl Human Tour -FINAL SERIES-』 2024年9月29日(日) 東京・Spotify O-Crest w / UNFAIR RULE 【セットリスト】 ■UNFAIR RULE 01. if 02. 嘘 03. 馬鹿みたい 04. ラストソング 05. 大阪 06. うた 07. 503 08. 曖昧 09. 非行少女 ■Bye-Bye-Handの方程式 01. ラブドール 02. swamp(沼) 03. 風街突風倶楽部 04. romance tower 05. 閃光配信 06. daring rolling 07. ソフビ人間 08. ひかりあうものたち 09. 妖艶さん 10. 熱帯夜と遊覧船 11. タヒ神サマ 12. 甘い記憶 13. 春のチャンス 14. やさしいひと 15. midnight parade 16. ロックンロール・スーパーノヴァ en1. 妖艶さん en2. あの子と宇宙に夢中な僕ら <ライブ情報> 『最高密度のLOVEツアー』 ■2025年 1月18日(土) 愛知・名古屋CLUB UPSET 開場 18:00 / 開演 18:30 1月26日(日) 大阪・OSAKA MUSE 開場 17:30 / 開演 18:00 1月31日(金) 東京・下北沢Shangri-La 開場 18:30 / 開演 19:00 『Bye-Bye-Handの方程式 pre. 秘密蜂蜜フェス -2025-』 ■2025年 3月29日(土) 大阪・心斎橋BIGCAT 開場 12:30 / 開演 13:15 3月30日(日) 大阪・心斎橋BIGCAT 開場 12:30 / 開演 13:15 出演:Bye-Bye-Handの方程式 / and more