名古屋ウィメンズで好タイムVもパリ五輪代表には届かず…MGC方式は本当に世界と勝負するためにベストの選考方法なのか?
しかし、MGC方式は選考方法が透明化され、選考する者の主観ではなく、システマチックに3人が選出される。選手たちにはおおむね好評だ。加えて、選手たちの〝目線〟を上げる意味でも、非常に役立っている。MGCファイナルチャレンジで設定記録を越えない限り、五輪には到達できない。そのタイムを狙って、トレーニングを積み上げることになるからだ。 今回も女子は3人が設定記録を突破。男子は突破者が出なかったものの、大阪と東京で合計7人が2時間6分台をマークした。MGC方式は、日本マラソン界のレベルアップにも役立っているだろう。 では、MGC方式は代表選考方法として、どれだけの〝効果〟があるのだろうか。 東京五輪は新型コロナウイルス感染拡大により1年延期となり、マラソンも札幌開催となった。高岡シニアディレクターは、「MGCによる選考の効果は東京五輪で検証できませんでした。選考方式としては、限りなく100点に近いと感じていますが、それが100点になるかはパリの結果次第だと思います」と語る。 パリ五輪にどのような期待を持っているのか。 「記録だけでいうと、相当難しい話ですね。でもパリ五輪は夏の大会でコースも起伏がある。オリンピックは記録ではないので、良いメンバーが選ばれたんじゃないかなと思っています。特に女子の前田選手は、2019年のMGCで暑さのなかを独走しましたし、起伏のある青梅マラソンでも30㎞の日本記録を樹立しました。期待できると思います」と瀬古リーダーが言えば、高岡シニアディレクターも「世界との差は簡単に埋められるものではありませんが、暑熱対策など科学的なアプローチを活用しながら挑戦できればチャンスはあると思います」と力強かった。 マラソンの世界記録は男子が2時間00分35秒、女子は2時間11分53秒。いずれも昨年の海外レース(男子は10月のシカゴ、女子は9月のベルリン)で誕生した記録だ。しかし、この大会に出走した日本人有力選手は女子の新谷仁美(積水化学)くらいだった。 なぜなら国内有力選手は10月15日に開催されたMGCに参戦していたからだ。また「グローバルスタンダード」を掲げる東京マラソンでトップ集団に挑む選手はいなかった。これもMGC方式の影響といえるかもしれない。 今後もMGC方式が継続されることになれば、海外レースの出場機会を意図的に増やすべきではないだろうか。世界と真剣勝負を挑むなら、国内だけで完結するのではなく、世界の実力を肌で感じることが必要な気がしている。 (文責・酒井政人/スポーツライター)
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