名古屋ウィメンズで好タイムVもパリ五輪代表には届かず…MGC方式は本当に世界と勝負するためにベストの選考方法なのか?
鈴木も地元を激走した。25㎞過ぎに先頭集団から引き離されたときには、「ゴールできるのか。そんな不安もあった」というが、「とにかく進めるだけでした」と、一歩一歩に力を込めた。 30㎞通過はトップ集団と40秒差、安藤と加世田にも10秒差をつけられたが、鈴木は終盤が強かった。35㎞からの5㎞を17分08秒で走破して、39㎞付近で加世田を抜いて3位に浮上。最終的には日本歴代9位となる2時間21分33秒の3位でゴールに飛び込んだ。 名古屋ウィメンズからパリ五輪代表内定選手は誕生しなかったが、MGCファイナルチャレンジ設定記録(2時間21分41秒)を安藤と鈴木がクリア。ともに自己ベストで、女子マラソンのレベルがこの1年間でグンと上がった印象だ。 これでMGCファイナルチャレンジは終了。男子は設定記録(2時間05分50秒)を突破する選手は現れず、MGCで「2位以内」に入った小山直城(Honda)と赤﨑暁(九電工)に続いて、同3位の大迫傑(Nike)がパリ五輪代表に内定した。 女子はすでに内定していた鈴木と一山に加えて、日本記録保持者となった前田がパリに向かうことになる。 東京五輪に引き続き実施された「MGC方式」は、日本マラソン界にどんな影響をもたらしたのか。そのなかで選出された日本代表選手は本番で活躍できるのか。 レース後の記者会見で、日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーは、「女子はレベルが上がったと思います。とにかく前田穂南選手の衝撃的な日本記録が大きかった。あれが今回の設定記録突破につながったんじゃないでしょうか。これからは2時間20分を切らないと勝負にならない。日本でもそういう感覚になってきていると思います」と評した。 日本陸連強化委員会の高岡寿成シニアディレクターも「男子は設定記録を突破できなかったんですけど、大阪と東京で2時間6分台がたくさん出ました。選手たちが新たな高い目標を目指して取り組めば、記録の更新は可能だと思います」と話した。 MGC方式がとられるまでは、男女とも前年の世界選手権と国内3大会ほどが「代表選考会」に指定されており、選考で揉めることが多かった。同一レースでの優劣は順位で判断すればいいが、それぞれの大会で、気象条件、出場選手、レース展開が異なるため、誰もが納得できる選考をするのが非常に難しかったからだ。
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