藤井聡太棋王に増田康宏八段が初挑戦 “隙”突いて苦しめる展開狙う
将棋の第50期棋王戦(共同通信社主催)の挑戦者決定二番勝負第1局が17日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、本戦トーナメント優勝の増田康宏八段(27)が敗者復活戦から勝ち上がった斎藤明日斗五段(26)に117手で勝ち、タイトル初挑戦を決めた。 藤井聡太棋王(22)との五番勝負は2025年2月2日に高知市で開幕する。 終局後、増田八段は「今期棋王戦は全体的に中盤戦でのミスが少なかったので勝ち抜けられた。藤井棋王はほとんどのタイトル戦で勝っていて、厳しくつらい勝負になるが、勝負ごとに『絶対負ける』というのはあり得ない。少しでも相手の隙(すき)や弱点を突いて指したい」と抱負を語った。 ◇藤井棋王の29連勝、目の当たりに 増田八段は、東京都昭島市出身で森下卓九段門下。14年10月にプロ入りし、17年6月に藤井棋王との初対戦で敗れ、29連勝の新記録達成を許した。大胆な言動が多く、「矢倉は終わった」「詰め将棋は意味ない」などの発言がたびたび注目を集めている。 トップ棋士がAI(人工知能)を活用した研究でしのぎを削る中、今年5月ごろからAIによる研究を減らした異色の存在だ。 「序盤をAIのように指せるのはアドバンテージになるが、中終盤でミスが出ることが多く、自分は両立できない」と感じ、代わりに棋譜並べなど昔ながらの研究の比重を増やし、中終盤の強化に取り組んできた。 ◇自分の感覚信じて勝負 かつて「意味がない」と断じた詰め将棋も、藤井棋王やその8冠の一角を崩した伊藤匠叡王(22)が取り組んで結果を出すのを見て考えを改めた。 「玉を詰ます点では効果があるとは思わないが、集中力や読みという点では効果があった。詰め将棋をやり始めてから中終盤でのミスが出なくなった気がする」 研究スタイルを変えてから成績が伸び、名人戦順位戦で今期からA級に初参加し、4勝2敗で2番手集団につけるなど、効果を実感しているようだ。 棋王戦五番勝負に向けて「藤井棋王は持ち時間がなくなってくると動揺する部分がある。時間攻めではないが、なるべく苦しむ展開で時間を使わせるのが理想。自分の感覚を信じた将棋で勝負したい」と意気込みを語った。【丸山進】