あなたの保有株は「金の斧、銀の斧」? 欲張るとヒドい目に遭いかねない【シニアのためのマネー講座】
【シニアのためのマネー講座】#89 「あなたが落としたのはこの金の斧ですか、それとも銀の斧ですか?」 ビットコインは半年で3倍近く値上がり史上最高値記録…高騰する暗号資産は「買い」なのか 「私が落としたのは鉄の斧です」 女神様はにっこりと笑い、「あなたは正直でよろしい。この金の斧も銀の斧も差し上げましょう」。 ご存じ、イソップ物語、「金の斧・銀の斧」である。 しかし、この話には続きがある。知り合いの欲張りな木こりは、その泉まで行き、自分の古びた鉄の斧を投げ入れる。 「あなたが落としたのは金の斧ですか?」 「はい、そうです」 「あなたは嘘をついています。この斧はあげません」 そして女神様は姿を消してしまった。「欲張りすぎると、失う代償が大きい」ということだ。 これを株式市場でたとえれば、「あなたの買ったのは高PER銘柄ですか、それとも低PER銘柄ですか?」となる。 「はい、私の買ったのは低PER銘柄です」と答えたら、女神様は「あなたは欲張りでなくてよろしい。金銀財宝をあげましょう」となる。 しかし、間違って「はい、私の買ったのは高PER銘柄です」と答えた場合には、「あなたは欲張りすぎです。ケツの毛まで抜かれてしまいなさい」となる。 ちなみにPERとは株価収益率の略。「株価/1株当たり純利益」で求められる。この値が低いと「割安株」と判断され、高すぎると「割高株」と判断される。 実際には「割高株」とはいわず、「成長株」と表現される。「会社の成長性が高い」とみんなが思っている、というわけだ。 株式市場において「すぐに儲かりそう」に見えるのが、この高PER銘柄である。値動きもよく、いかにも上昇しそうに見える。しかし、いったん動きが止まると、その反動で急落を余儀なくされる「欲張っただけに、そのあとは大損」というわけだ。 ■「成長株」への投資は、ほどほどに シニアのみなさんは、こういった「成長株」への投資は、ほどほどにしておいた方がいいだろう。株式市場での人気は高いが、すぐに暴落する危険性が高いからだ。 仮に塩漬けになってしまえば、生きている間に日の目を見ない可能性すらある。投資は成長性が低くても安全なものを選ぶようにしたい。 それでも「イキのいい成長株に投資をしたい!」というのであれば、それ相当の覚悟が必要だ。 でも、決して女神様に「あなたが落としたいのはお金ですか、それとも命ですか?」と言われないようにしたい。 (黒岩泰/株式アナリスト)