尼崎工場夜景で脚光の写真家は保育士出身 人生は一度、悔いなく「変わる街を写真で残す」 アマ物語
小林さんの不思議は有名になったいまでも「スクール写真」を撮っていることだろう。撮影会社に登録し、小学校の運動会や遠足に派遣されて、子供たちの楽しそうな写真を撮っているのだ。
「保育士だったときの経験が結構、生きているんです。子供たちは次にどんな行動に出るのか、どうなったら危険なのか予測もできる。スクール写真は定期的に需要がある。報酬は安いけれど、そこがいい」
小林さんはいま「尼崎」を再発見している―という。「尼崎にはあちらこちらにまだ『昭和の色』が残っている。古いものと新しいものがバランスよく共存する町、それが尼崎。でも、急速に新しく変わろうとしている。だから写真に撮って、残しておかないといけない」
小林さんは今日もファインダーから「尼崎」をのぞいている。
■「尼猫」見つけて
小林さんは6月21日に「尼崎の猫」の写真集を出版する。タイトルは『おるね 路地猫さがしBOOK』(亜紀書房、税抜き1600円)。小林さんが趣味で猫の写真を撮り、毎日、交流サイト(SNS)のXにあげていたら「出版社から声がかかった」という。
「カメラを持って猫を探していると、餌を持ったおばちゃんが出てきて、一緒に探してくれるんですよ。尼崎ってホンマにあったかい町です」(田所龍一)
◇こばやし・てつろう 昭和53年生まれ。尼崎市立園田中―市立尼崎東高(現尼崎双星高)―関西保育福祉専門学校を経て保育士に。平成18年、雑誌の「日本フォトコンテスト」で「軍艦島」を撮り、金賞を受賞。これを機に「廃虚」や「工場夜景」を撮影する。20年に最初の写真集『廃虚ディスカバリー』(アスペクト)を出版。プロの写真家となる。