パーティ券疑獄の裏で進む検察定年延長をめぐる情報公開訴訟を読み解く
第15回のディスクロージャーでは2020年に安倍政権が行った東京高検検事長・黒川弘務氏の定年延長の閣議決定の経緯をめぐる情報公開訴訟を取り上げ、目下、自民党を揺るがしているパーティ疑獄事件の背景にある官僚制と政治の関係などを議論した。 パーティ券問題をめぐっては安倍派閣僚の一斉交代が行われ、12月19日には遂に派閥事務所への強制捜査へと拡大の一途を辿っている。ここに来て政治家の逮捕も辞さない構えを見せている検察の大攻勢の背後に、安倍政権が検察の捜査のみならず検察幹部の人事にまで介入したことに対する意趣返しの意味も込められていると見る向きは多い。実際、安倍政権の「守護神」と異名を取った黒川氏が検察の幹部ポストを歴任した安倍政権下では、桜を見る会問題を始め数々の政治絡みの疑惑が報じられたが、最後までこれに検察が着手することはなかった。 そして、安倍政権の検察支配の象徴とも言える出来事が、「官邸の守護神」と呼ばれた元東京高検検事長の黒川氏を検事総長に就かせるために安倍政権が強行した検察官の定年延長問題だった。 これは検察官の定年を、従来の解釈では検察官には適用できないとされていた国家公務員法を特例的に適用することで、黒川氏の検事総長就任を可能にしようというもので、安倍政権が政治目的で法律を恣意的に運用しているとの批判が沸き起こった。結局黒川氏は緊急事態宣言下で新聞記者と「賭けマージャン」をしていたことが明らかになり、検事総長就任前に辞任に追い込まれたが、閣議決定の経緯などは説明されていない。 今大騒ぎになっているパーティ券収入の政治資金収支報告書への未記載問題を最初に告発した神戸学院大学の上脇博之教授は、この定年延長が閣議決定される過程で政府内でどのような議論が交わされ、どのような手続きを経たのかということに関する情報の開示を求めて2020年6月、情報公開訴訟を提起し、今もその裁判が大阪地裁で進行中だ。 今回の番組では、その裁判の訴状やここまで明らかになった政府側、検察側の対応から、政府が安倍政権の人事への介入をどれほど重く受け止めていたのかを読み解く。また、ここまで政府側は閣議決定にいたる意思決定の過程を記した文書を「不存在」で通しているが、情報公開クリアリングハウスの三木由希子氏は、公文書管理法では法律の制定や改廃に関する文書の作成が義務付けられており、解釈変更をめぐるやり取りも文書が残されているはずだと指摘する。 現在の政治状況を読み解く上でも重要な情報公開訴訟の行方を引き続きウォッチしていく必要がある。三木氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。 【プロフィール】 三木 由希子(みき ゆきこ) NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長 1972年東京都生まれ。96年横浜市立大卒。同年「情報公開法を求める市民運動」事務局スタッフ。99年NPO法人情報公開クリアリングハウスを設立し室長に就任。理事を経て2011年より現職。共著に『社会の「見える化」をどう実現するか―福島第一原発事故を教訓に』、『情報公開と憲法 知る権利はどう使う』など。 神保 哲生(じんぼう てつお) ジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表 ・編集主幹 1961年東京生まれ。87年コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。クリスチャン・サイエンス・モニター、AP通信など米国報道機関の記者を経て99年ニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を開局し代表に就任。著書に『地雷リポート』、『ツバル 地球温暖化に沈む国』、『PC遠隔操作事件』、訳書に『食の終焉』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』など。 【ビデオニュース・ドットコムについて】 ビデオニュース・ドットコムは真に公共的な報道のためには広告に依存しない経営基盤が不可欠との考えから、会員の皆様よりいただく視聴料(月額500円+消費税)によって運営されているニュース専門インターネット放送局です。 (本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)