<アメリカ経済を良くするのはどっち?>バイデン政策を引き継ぐハリスと、自己中心的なトランプ
スティグリッツ・コロンビア大学教授(ノーベル経済学賞受賞者)が、 2024年9月3日付のProject Syndicate に、「トランプの勝利は米国経済にとり何を意味するか」と題する論説を書いている。 11月の大統領選挙は多くの理由で重要である。米国の民主主義の生き残りのみならず、世界に影響を与える経済の健全な舵取りもこれにかかっている。 ハリス副大統領はその経済政策をまだ詳細に語っていないが、バイデンの中心的政策(競争力強化、環境保護、生活費の削減、成長の維持、国家経済主権の強化、不平等の緩和)を維持しそうである。 対照的に、トランプは、石炭・石油会社に自由を与え、Elon Musk や Peter Thiel のような億万長者に取り入っている。これは米経済を弱くし、競争力をなくさせ、不平等にするやり方である。 健全な経済の舵取りは達成すべき目標設定とそれを実現する政策立案を要求するが、ショックに対応し新しい機会をつかむ能力も重要である。トランプは コロナへの対応に失敗し、百万人以上の死者を出し、漂白剤の注射を奨めたこともあった。 前例のない出来事への反応は最善の科学に基づく困難な判断を必要とする。ハリスには、思慮深く評価し、均衡のとれた解決策を作る能力がある。トランプは科学知識を拒否する衝動的なナルシストである。 中国が提起する挑戦への彼の対応、60%以上の関税をかけるとの提案を考えてみよう。まじめな経済学者は、これは中国から直接輸入される商品のみならず、中国のインプットがある他の数多くの商品の価格を上げると言う。低・中所得のアメリカ人がそのコスト高を担うことになる。 インフレが起き、FRB は利子を上げざるを得なくなり、経済は成長の鈍化、インフレ高進、失業増加の3つの困難に見舞われよう。さらにトランプは 米連邦準備理事会(FRB) の独立を脅かす極端な立場をとっている。 トランプの税制改革も心配である。億万長者への 2017年の減税は追加投資をもたらさずに、株買戻しに使われた。共和党は裕福な人への減税を好むが、少なくともそういう減税は財政赤字につながると考え、25年に始まるサンセットクローズ条項を追加した。