実は貴重な遺産…1989年開催「アジア太平洋博覧会(福岡市)」の屋外展示物が阿久根の大型スーパーの敷地で展示されていた
鹿児島県阿久根市赤瀬川の大型スーパーAZあくね敷地内に一対の謎めいた像がある。七つの頭に波打つ長い体。夜はライトアップされるが正体を知る人は少なく「やまたのおろち?」なんて声も聞こえてくる。 【写真】ライトアップされた「七頭竜神」=阿久根市赤瀬川のAZあくね
高さ3メートル超、体は金色のうろこに覆われ、近くには「七頭竜神」と刻まれた石碑が。同店によると、1989年に福岡市で開催されたアジア太平洋博覧会(愛称よかトピア)の展示物。閉幕後に公募で譲り受け、創業者の故牧尾英二前代表が大切にしてきた。 福岡市博物館に尋ねると会場中心部を飾った「タイの竜パヤナーク」の像と分かった。同館は「よかトピアの屋外展示物は、ほとんど残っていない。貴重な遺産」と価値を強調する。 一方で、市職員として展示物の選定を担当した貞刈厚仁・博多座相談役(70)=元副市長=は像のモデルは蛇神「ナーガ」と明かした。タイの寺院「ワット・プラタート・ドイ・ステープ」参道にある仏法の守護神ナーガ像に感動して再現を決めたが、いつの間にか名前が変わっていた。 タイ国政府観光庁福岡事務所によると、パヤナークは「ナーガの王」の意味。竜は中国発祥でタイにはないため、外国人向けの観光ガイドなどでは、パヤナークを竜にあてはめて紹介していることが多いという。
竜は隆盛、ナーガは不死や生命力を象徴し、どちらにしても縁起の良い守り神だ。「人々の暮らしを守る店にふさわしい像。どうか末永くかわいがって」と貞刈さん。AZの牧尾由美会長(56)は「父と同じように地域を守る願いを込め、大事にする」と話している。
南日本新聞 | 鹿児島