子どもの「カフェイン依存」が増加、その症状と対策は?飲料から発展する「カフェイン錠剤」の影響深刻
「やめられない」身体依存に陥るケースも
とはいえ、エナジードリンクはコーヒーなどと比べて子どもも飲みやすい風味づけがされており、大容量の缶も販売されている。子どもが口にし続けることで、カフェインに依存してしまうリスクも気になるところだ。 「15歳以下の子どもがカフェインの錠剤を口にすることはないでしょうから、誤飲などがない限り急性中毒に陥ることはあまりないと思いますが、『眠気覚まし』などを目的に毎日のようにエナジードリンクやカフェイン飲料を飲み続けることで身体的な『依存状態』に陥ることは考えられます」 依存状態とは、どのような状態なのだろうか。 「カフェインには興奮作用があるので、適量を摂取すれば眠気やだるさを取り除くのに有効です。ところが、摂りすぎると過剰に興奮し、イライラや落ち着きのなさといった症状が現れます。小児科からは、授業中に落ち着いて座っていられない子が、よくよく聞いてみるとカフェインの摂りすぎだったという事例も聞いたことがあります」 また、カフェイン摂取をやめた際に強い頭痛やだるさ、不眠、不安、抑うつといった症状が現れ、それらに耐えかねて再びカフェインを摂取してしまうことも少なくないという。 さらに、過剰摂取による急性中毒の場合は、大人と異なる症状が起こる。 「カフェインを過剰摂取した場合、成人では不整脈や、ひどくなると命にかかわる心室細動などが起こることが多いですが、10代くらいまでの子どもはけいれんを起こすことが多いとされていて、これは成人と比較して中枢神経への刺激が強く出るためと考えられています。また、これは成人と共通ですが、嘔吐中枢へも刺激が起こり、繰り返し嘔吐するケースがほとんどです」
子どものリスクを抑えるカフェインとの付き合い方
カフェインは、同じ量を摂取しても健康に影響が出る人と出ない人の差が大きいため、摂取許容量などの国際基準は定められていない。 海外に目を向けると、成人1日あたり400mgまでを目安としているところが多い(欧州食品安全機関、カナダ保健省など)。子どもは年齢によって異なるが、10~12歳では1日あたり85mgまでが望ましいとされている(カナダ保健省)。 「一度に多量の摂取は危険ですが、例えば食後のコーヒーのように、時間を空けて摂取するぶんには健康被害のリスクは少ないといえます。カフェインは摂取後数時間で排出されていくので、3~4時間の間隔を空けることでリスクを取り除けると考えています」 カフェインは食べ物や飲み物のほか、風邪薬などの市販薬に含まれていることも多い。これらの併用にも注意してほしい、と上條氏は付け加えた。 さらに、子どもがカフェインへの依存傾向にある場合はどのように対処するのがよいかも尋ねてみた。 「カフェインを日常的に摂取していて、以前と比べてイライラしたり、興奮しやすかったりといった傾向がみられたときには、まずは小児科へ相談するのがよいでしょう。もちろん嘔吐やけいれんといった身体症状がみられるときには救急を受診してください。高校生以上の子どもであれば、かかりつけの医師や総合診療科を受診し、適切な科を受診しましょう」 コンビニエンスストアや自動販売機でも気軽に購入でき、子どもも手に取りやすいエナジードリンクをはじめとしたカフェインを含む飲み物や食品。常用するリスクをまずは大人が理解したうえで、適切な距離で付き合えるように子どもにも伝えていく必要がありそうだ。 (文:藤堂真衣、注記のない写真: Plan Shooting 2 / Imazins/ Getty)
東洋経済education × ICT編集部