「ドン・ファン」遺産15億円、「キフする」とした遺言書は「有効」
「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年に死亡した資産家、野崎幸助さん(当時77)=和歌山県田辺市=のものとされる手書きの「遺言書」が無効かどうかが争われた裁判で、和歌山地裁(高橋綾子裁判長)は21日、遺言は有効だとする判決を言い渡した。 野崎さんは生前、金融業などを展開。相続財産管理人の調査で、遺産は約15億円あった。 野崎さんが経営していた会社の元幹部が保管していた遺言書は、A4判の紙に、赤色のサインペンで書かれていた。《いごん》《個人の全財産を田辺市にキフする》などと書かれ、2013年の日付と署名のほか実印が押されていた。 この遺言が無効だと提訴した野崎さんの実兄ら親族側は、遺言書の筆跡が野崎さんのものではない▽実印は会社の事務所にあって野崎さんの承認なく押すことができた、などと主張。田辺市に全財産を遺贈する意思を表明したことはなく、遺言の内容は不自然だと訴えた。 判決は、市が提出した筆跡鑑定書の結果をもとに、「(野崎さんの)筆跡とみて相違ない」と判断。野崎さんが好んでいた赤色のサインペンで書かれたことは、本人の自筆であることを裏付けるとも指摘し、遺言書が、遺言としての要件を満たしていると結論づけた。
朝日新聞社