複数システムで最終予選へ! 森保ジャパンの3バック本格導入の大きなメリット、そして一抹の不安
良くも悪くも固定的になっていく可能性も
シリア戦は3-4-2-1のウイングバックが中村と堂安律という、4バックでは攻撃的なポジションを担うタイプの組み合わせだったこともあり、攻撃的な中村を守備的な伊藤に代えることで、4-2-3-1に変更できたが、ミャンマー戦のように右ウイングバックが菅原由勢であれば、メンバー変更なく3バックから4バックに変更できたはず。 実際、今回の活動の初日に、同じメンバーで3バックと4バックを切り替えるトレーニングを行なっていた。 またシリア戦では3バックから4バックへの変更に伴い、ディフェンスラインは右から冨安、板倉滉、町田浩樹、伊藤とセンターバックをこなせる選手が4人揃うという、これまでの日本代表には類を見ない4バックで構成されたが、町田は「洋輝と入れ替わるかもみたいな感じでは言ってたんですけど」と語る。つまりは4バックの中でも、町田が左サイドバックで、伊藤が左センターバックになるプランもあったわけだ。 「1人で複数ポジションをこなせるのが当たり前になっている」 そう町田が主張するように、第二次森保ジャパンにおいては、可変システムも複数ポジションもかなりチームに組み込まれてきており、今回の3バックはその延長線上にあることが証明されるような、シリア戦のパフォーマンスだった。 ただ、代表チームでこれだけ柔軟で、幅広い戦い方が浸透してくると、フレッシュな選手がいきなり入ってフィットすることが難しくなるかもしれない。 おそらくパリ五輪を終えて、最終予選に向けては現在のU-23世代からA代表に食い込んでくる選手がいるはず。彼らは大岩剛監督のもとで、ある程度、A代表と似通った戦術コンセプトで経験を積んでおり、森保監督の要求にも応えやすいかもしれないが、A代表の主力選手たちとの共有という部分では、ハードルがあるかもしれない。どちらの代表も経験していない選手であれば、さらに簡単ではないだろう。 3か月後からスタートするアジア最終予選の期間に、親善試合や練習試合で新戦力をテストするチャンスはほとんど無い。事実上の初招集だった鈴木唯人を含む今回の26人や、怪我で外れた三笘薫をはじめ、伊東純也、浅野拓磨、毎熊晟矢、佐野海舟など、第二次森保ジャパンで、これまでの活動を経験している選手は問題なくフィットするはずだが、そうした選手を含む30人前後の選手が、良くも悪くも固定的になっていく可能性もある。 もしかしたら国内組による候補合宿など、イレギュラーな強化を入れていくかもしれないが、3-4-2-1を本格的に導入したメリットが大いに期待できる一方で、新しい選手の組み込みという課題に、森保監督がどう向き合っていくのか興味深いテーマだ。 取材・文●河治良幸