英誌が指摘「OpenAIに700億円超投資した孫正義のAI戦略は完全に出遅れている」
2024年10月、ソフトバンクグループがOpenAIに巨額の投資をしたニュースは、国内外で大きな話題を集めた。業績回復への期待が高まる一方、孫正義会長のAI戦略は「絶望的なまでに出遅れている」と、英経済誌「エコノミスト」は指摘する。 【画像】英誌が指摘「OpenAIに700億円超投資した孫正義のAI戦略は完全に出遅れている」 孫正義(67)は最高の成功と、どん底の両極端を知る人物だ。 彼は、2000年初頭のドットコムバブルの絶頂期に世界有数の富豪になった。同じ頃、まだ弱小ECサイトだったアリババグループに2000万ドルを投じた賭けは、ベンチャーキャピタル(VC)史上最高の投資に数えられる。 通信とソフトウェアの複合企業だったソフトバンクグループ(ソフトバンクG)は、2021年には世界的な投資企業に変貌を遂げ、日本企業史上最大の年間純利益を計上した。ところが翌2022年には、円安や株価の下落などによって日本企業史上2番目に大きな損失を出した。 さらに2023年には160億ドルを出資したWeWork(ウィーワーク)の経営が破綻し、「天才」と呼ばれた孫は「へぼ投資家」と揶揄された。
出遅れた「AI戦略」
これほど激しい浮き沈みを経験したら、誰でも疲弊する。 2022年11月には、疲れ知らずのビリオネアとして名を馳せるマサも消耗していた。当時65歳だった彼は、決算発表の電話会議で、「引き続き代表として留まるが、ソフトバンクGの財務と戦略に関する今後の最新情報はCFO(最高財務責任者)が発表する」と述べた。 それは自分自身をナポレオンに真顔でなぞらえる、虚栄心の塊のような人物らしからぬ発言だった。もっともナポレオンがたびたび身を隠しては返り咲いたように、孫の弱気も長くは続かなかった。 2024年6月、活力を取り戻した孫は株主を前に、過去のギャンブルはすべて、ASI(人工超知能)を実現させる壮大な夢のためのウォームアップだったと述べた。 さらにソフトバンクGは、その夢を実現するための「立役者」を探しはじめる。2024年10月には、生成AI開発を牽引するOpenAIの資金調達に参加し、5億ドル(約764億円)を投資した。このとき66億ドルの資金を調達したOpenAIの評価額は、1570億ドルに達している。 これに先駆けて、ソフトバンクGは英ケンブリッジ大学発の自動運転車スタートアップWayve(ウェイブ)にも5億ドルを投じ、さらに金額は下回るものの、生成AI検索サービスの米Perplexity(パープレキシティ)にも投資した。 今後は、生成AI向けの半導体製造を独占するエヌビディアに対抗可能な企業を育てるため、さらに巨額の投資(おそらく1000億ドル規模)をすると発言している。 2017~20年の決算発表でAIについて500回以上も言及していた孫は、ついにその事業に本腰を入れはじめたようだ。だが、絶望的に出遅れている感は否めない。
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