選挙報道の現実と課題~有権者が既存メディアに不信を抱き、SNSへの依存を高める理由~【調査情報デジタル】
ただ各党の公約を並べるだけであればホームページなどからの引用で済むが、短い時間でどこまで理解可能なのだろうか。こんな状況が続くようでは有権者から見た場合、テレビは自分たちのニーズに応えてくれないとして「テレビ不信」をますます招く要因になってしまう。 このようにニュース番組の選挙報道の内容を細かくチェックしてみると、「争点」についての報道が従来よりも明らかに減っている。他方で期日前投票をすればレストランなどで割引きを受けることができるという“センキョ割”などについての情報を流す「非争点型」のニュースは各局とも増えている印象だ。 センキョ割のニュースは、そうしたサービスを行っている企業や店などを取材すればいいのでニュースをつくる側から言えば「比較的お手軽なかたちで」素材にすることができる。家電量販店やスーパーの割引き、とんかつ御膳の値引き、ラーメンの替え玉や卵が無料、スーパー銭湯や遊園地の入場料割引き・・・。 今回、改めて検証してみると、民放のあるニュース番組では選挙期間中のある日の放送で「争点」などの政策に関わる報道は一切扱わず、センキョ割についての報道だけで終わらせていたケースもあった。十分な報道時間をとって「争点」も伝えているのならいいのだが、センキョ割だけを伝えるという姿勢には違和感が残る。 一方、「争点」については物価高でも年金問題、少子化対策でもエネルギー政策でも「現場」や「当事者」を映像で表現するために探すとなるとコストやエネルギーはそれなりにかかり、手間暇や事実の確認などの作業は簡単ではない。簡単ではないということを口実にして、センキョ割などのテーマを選択するような安直な姿勢になっていなければいいのだが・・・。 特に民放については広告収入の低下で経営が以前と比べて厳しくなっているのは明らかだが、それゆえに「易きに流れている」という傾向を感じる。争点についての“現場”の取材の乏しさはテレビ人たちの使命感の欠如の表れかもしれない。