引退勧告を大橋会長から受けた”激闘王”八重樫東に心境直撃「決まっていると言えば決まっていますが頭の中をぐるぐる」
だが、8ラウンドに大橋会長がタオルを投げ入れる寸前までいき、9ラウンドにも一方的に打たれ、最後は立ったままレフェリーに止められたムザラネ戦で心を折られたわけではない。6ラウンドまでのジャッジはドロー。ケガのアクシデントがなく、本能のまま打ち合いに応じず、ポイントアウトを徹底していれば勝てたという「悔い」が残っていることも確かだろう。 その一方で、セカンドキャリアの具体像も抱いている。八重樫は、15年間のプロボクサー生活の中で、トップクラスの専門家から学んできたフィジカル&フィットネストレーニングの理論と、自らの肉体を実験台に”博士”のようなスポーツ・ニュートリションの分野の知識を身につけ減量方法も構築した。その蓄積された経験と理論をもとに、ボクサー、格闘家に特化したフィジカル&フィットネストレーナーとして”第二の八重樫”を育成したいとの夢がある。 ボクシングの技術もわかり、勝つためには、どこに、どんな筋肉が必要で、12ラウンドを戦うスタミナをどうつければいいかを知るフィジカル&フィットネストレーナーがいれば、パーフェクトだろう。それが実現すれば、まさに業界にとって画期的な異例の転身になる。 八重樫は、いつ大橋会長の引退勧告への答えを出すのか。 3階級を制覇する過程で、敗れてなお人々を引き付けた”ロマゴン”戦など、数多くの感動を与えてくれた”激闘王”へのリスペクトをこめて人生最大の結論は急がせず、待つことにしようではないか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)