規定打席に届かず…悔しい1年となったロッテ・中村奨吾
ロッテの中村奨吾はサードにコンバートした今季、120試合に出場したが2017年以来7年ぶりに規定打席に届かず、打率.234、4本塁打、27打点という成績だった。 今季に向けて「しっかり下半身を使って強い打球を今年は内野の間であったり、外野の間であったり、しっかり抜けるような打球を打てるように下半身をもう1度鍛え直して、下半身を使って打てるように今(2月4日取材時点で)は取り組んでいます」とバットを振った。 2月13日から始まった練習試合では、2月23日の楽天との練習試合で1安打2打点、2月24日と2月25日の韓国ロッテとの練習試合は2試合連続マルチ安打をマークするなど、打率.270、3打点。オープン戦が始まってからは、3月9日のソフトバンク戦でレフトポールに直撃する本塁打を放ち、トッポ1000個プレゼントされた。オープン戦の打率は.219だったが、23日の中日戦では2安打した。 練習試合、オープン戦を経て、“下半身を使って強く打つこと”は自身の中でできていたのだろうかーー。 「最近は割といい感じでバッティングができていると思いますし、これをもっともっとレベルを上げていければいいかなと思います」。 2024年のシーズンが始まった。開幕直後の4月5、6日のオリックス戦では初球からノーステップ打法で打ったり、普段使用している茶色のバットではなく、白木のバットを使ったりしていた。それは、下半身を使って打つ一環の中で、ノーステップであったり、白木のバットを使用していたのだろうかーー。 「タイミングがとりにくかったりというのがあったので、ノーステップにしたというのはありました。白木のバットは下半身と関係ないですね」。 4月終了時点で打率.188、5月の月間打率.227だったが、交流戦では打率.293(41-12)。5月29日のヤクルト戦から6月5日の巨人戦にかけて7試合連続安打をマークした。交流戦前の5月26日のソフトバンク戦では、2-0の6回無死走者なしの第3打席、藤井皓哉に対して2球で追い込まれるも、そこからボール球を見極め、ファウルで粘り、3ボール2ストライクから投じた9球目の127キロスライダーを見送り四球を選んだ。7試合連続安打中の5月31日の阪神戦では5打席で、阪神投手陣に31球を投げさすなど粘りの打撃が増えた。 中村は「打ちにいく中で球数が増えている印象ですかね。球数を投げさそうという意図で増えているわけではないかなと思います」と教えてくれた。粘れている時は安打が増えている印象を受けるが、そこについても「打ちにいく中でファウル、粘りだったりが多いので、安打が出ているのはわからないですけど、しっかり打ちに行けているから安打に繋がるところもあるのかなと思います」と自己分析した。 中村は2018年から4年連続全試合出場を果たし、試合に出ることを強くこだわってきた。今季は開幕からスタメン出場だけでなく、ベンチスタートという日も増えた。 6月18日の取材で「試合前から試合に出ている時と変わらない準備もしますし、試合に出ていなくても自分だったらこういうことを考えながら打席に立つかなとか、状況とかを見ながら状況に応じたことを考えながら見ていることが多いですかね。展開とかを読みながら裏で準備をしたりとかはありますね」とスタメン出場する時と変わらずしっかりと準備をした。 交流戦明け、6月25日の楽天戦、4-0の3回二死一塁の第2打席、内星龍が1ボール2ストライクから投じたスライダーを右中間に破る適時二塁打を放ち、通算1000安打を達成。「都志也(佐藤都志也)がしっかり走ってくれたおかげでタイムリーとなったので、感謝したいです。1000本安打に関しては、支えてくださった方々に感謝して、またここから日々精進していきたいです」。 7月5日の西武戦では、3-0の7回二死一塁の第4打席、豆田泰志が3ボール2ストライクから投じた10球目のストレートをセンター前安打。7月9日の楽天戦、0-4の9回一死一塁の第4打席、則本昂大が3ボール2ストライクから投じた6球目のストレートを完璧に捉えレフトスタンド中段へ2ラン。吉井理人監督は試合後、「よかったですね。3-2から真っ直ぐを思いっきり振ったのを久しぶりに見たのでね」と笑顔を見せた。 7月10日の楽天戦、8-1の2回一死一、二塁の第2打席、櫻井周斗に対して2球で追い込まれるもそこから4球連続でボールを見送り3ボール2ストライクから6球目の135キロカットボールを見逃し四球を選んだ。球数を投げさせ、ボールを見極め四球を選ぶ本来の姿が戻ってきた。 足でも7月12日のオリックス戦、0-0の4回二死二塁で高部の一塁へのゴロ。一塁ベースカバーに入るのが遅れた投手・曽谷龍平の隙を突いて二塁から中村がホームを狙う。アウトのタイミングに見えたが、曽谷の送球が逸れて中村がホームイン。結果的にこれが決勝点となった。 オールスター明けの8月4日のオリックス戦から12日のオリックス戦にかけて5試合連続安打。8月28日の西武戦では無安打だったが、1打席目に先発・隅田知一郎に10球を投げさすなど、西武投手陣に5打席で30球を投げさせた。 9月8日の楽天戦では、2-3の5回に逆転のきっかけとなる二塁打を放ち、その後、藤原恭大、ソトの適時打で逆転に成功した。吉井監督は試合後、「最近バッティングの調子が上がってきているので、その証拠に積極的にいっていたし、(中村)奨吾の持ち味が出てきたかなと思います」と評価した。 中村は11日のオリックス戦では本塁打を含む4安打の大暴れ。9月28日の西武戦では西武投手陣に5打席で34球を投げさせ、CS進出を決めた10月1日の楽天戦では、4-1の9回一死一、三塁の第4打席、藤平が投じた初球の149キロストレートをピッチャー横にセーフティスクイズを成功させた。 ファンからは打撃面で求めるところが大きく時に厳しい声もあるが、今季も打撃面で苦労した中で、進塁打、バント、1つ先を狙った走塁、投手陣に球数を投げさすなど最低限の役割を果たした。また、全体練習前にはグラウンドで黙々と一人バットを振り、試合で結果を残すための準備を怠ることはなかった。大きな故障で離脱することなく、最前線で戦い続ける背番号“8”。来季こそ、打って貢献してくれるはずだ。 取材・文=岩下雄太
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