「ジェンダード・イノベーション」ってナンだ?課題解決のカギは性差の分析?“男女はこうあるべき”を生み出す可能性は
一方で、リディラバ代表の安部敏樹氏は「性差に踏み込んでいく難しさもある」と指摘する。「科学的にこうだと知ることにより、差別的な目線も生まれる。『男性はこう』『女性はこう』と社会的性差を決めつけてしまうことにつながるため、サイエンスと社会のバイアスはセットに論じないほうがいい」。
■アンコンシャス・バイアスを乗り越えるには
「平等」と「公正」には違いがある。平等(EQUALITY)は全員に同じものを与える価値観で、公正(EQUITY)は機会へのアクセシビリティ確保を指す。塀の向こうのスポーツを見る場合、前者はそれぞれに同じ高さの踏み台が与えられるが、後者では身長に応じた踏み台が用意される。 この例をもとに、行木氏は「公正にすることで、同じアクセシビリティを提供できる。こういう考え方が社会の中で一定の認知度を得ると、考え方はずいぶん変わるのではないか」と投げかける。
一方、ひろゆき氏は、東大総長のコメントを引き合いに「『女性は東大を受験できない』『平均点数が高くないと合格できない』となると問題だ」と指摘。「男女とも自由に受けられて、結果として女性が少なかったとしても、それは女性の選択。入口がしっかりしていれば、何の問題もない」との考えを示す。 これに安部氏は「それは教育課程の男女差がある程度フェアになっている場合だ。例えば九州で『女の子は、東大ではなく九大が限界だ』と言われるようなことが残っている。スタートがフェアかどうかも見ないといけない」と返した。 行木氏は、そこにはアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があると説明する。「『女性は理系に向いていない』『県外に行かないで家で過ごした方がいい』などの価値観から、女性が理系や研究職に進むのを望まなくなる現状は、社会課題だと感じる」。
女性比率の「ティッピングポイント」という考え方がある。スイス国際経営開発研究所のギンカ・トーゲル教授が提唱するもので、女性1人の「トークン(象徴)」の段階では1人が女性全体を代表すると思われがちだが、女性比率25%の「マイノリティ」になると女性も1人ひとり異なるとの意識が生まれ、女性比率35%の「ティッピングポイント」へ進むと性別という属性を気にせずに認識される。 その上で行木氏は、「現状ではティッピングポイントまでいっていない」とし、「女性をある程度優遇してその数まで持っていくことで、多様性を確保する。今はその過渡期だと思う。一定数の女性が活躍できれば、意識せずに過ごせる社会になっていく」との見方を示す。 安部氏は、社会的弱者の格差を是正する「アファーマティブアクション」を進めるべきだと言う。「ガンガンやって是正を進める段階を早く終わらせて、次のフェアに勝負できる社会を実現したい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)