エアコンなし? でも史上最高にエコな五輪、パリ選手村を見学
「巨大な実験室だ」
主催者が100%再生可能エネルギーで運営するとうたう大会と同様に、選手村のためのあらゆるものは持続可能性を考慮して建設された。建設する対象を最小限に抑えるために、主催者は敷地内にあるいくつかの既存の建物を一時的または恒久的に改修した。その中には「居住者センター」に作り替えられた古い電気工場も含まれている。選手のトレーニング施設は過去の大会のように新たに建設するのではなく、地区内にある既存の映画スタジオを借りて使用する。 グレノン氏によると、建設された建物には木材とリサイクル素材が使用され、大会プロジェクトの温室効果ガスの排出量(カーボンフットプリント)を1平方メートルあたり30%削減する工程が採用された。これはフランスの環境規制で求められている削減量を上回る。 グレノン氏は、すべての屋上の3分の1にはソーラーパネルが備え付けられ、残りの3分の1には室内の温度を下げるための庭があると説明する。建物の間にはセーヌ川に通じる長い、まっすぐな通路が設けられ、川の近くの新鮮な空気をできるだけ奥まで運ぶ風の通り道になっている。フランス国立気象局によると、今夏の気温は例年より高くなると予想されており、暑さが選手の安全を脅かす可能性があるとの懸念が広がっている。 リサイクルされるのは建物だけではない。 選手村には約3000戸の住宅があり、東京オリンピックで使用されたものと同じリサイクル可能な素材で作られたベッドが合計1万4250台設置される。マットレスは再利用された素材で作られ、裏返すことで硬さを調整できる。椅子は段ボール製で、大会後、簡単にリサイクルできる。 主催者は選手村全体でいくつかの実験を行っている。その目的は、新しいグリーンテクノロジーや建設方法が現実世界で実行可能かどうかを検証することだ。 グレノン氏は「巨大な実験室だ」と話す。 一つの歩道は貝殻で作られている。理論的にはこれらの貝殻は雨を吸収するとされる。暑い日には蓄えられた水分が蒸発することで通行人は涼しさを感じられる。 選手村のメインストリートには実験的な屋外空気清浄機が5台設置されている。未確認飛行物体(UFO)のような巨大な空気清浄機の塔は、掃除機のように設計されており、汚染された空気を吸い込み、危険な粒子を除去する。製作したジェローム・ジャコモニ氏はCNNに、この装置は「あらゆる大きさの粒子状物質の95%」を浄化できると語った。5台の装置は1時間当たりオリンピック競泳用プール40個分の大気をごくわずかな電力で浄化できるという。