伸びる〝自分用お歳暮〟需要 三越伊勢丹は売り上げの1割占める、高齢化で変わる贈答市場
今年も残り約2カ月となり、お歳暮商戦が本格化してきた。日本橋三越本店(東京都中央区)では30日、注文を受け付けるギフトセンターを開設した。少子高齢化で上司や取引先などに贈答していた世代が激減する中、自分や家族で楽しめる〝セルフギフト〟を充実させたのが特徴。同ギフトは今や三越伊勢丹のお歳暮売り上げの約1割を占めるまで成長しており、少人数で楽しめるよう小分けされたり、簡単に調理できたりと、工夫を凝らすことで、さらなる販売増につなげる考えだ。 ■初の試食会で顧客分析 日本橋三越本店では10月、歳暮商戦に向け、初めて顧客約30人を招いた試食会を開催。顧客の反応や意見を集めて今後の歳暮商品の改良や開発に役立てる試みで、この日開設したギフトセンターでは、試食会で評判の良かったセルフギフト商品を目立つよう配置した。 試食会で特に人気が高かったのが、小鍋仕立てのすき焼きを電子レンジで温めるだけで味わえる三越伊勢丹の限定商品「近江牛少量すき焼きセット」(6480円)。三越伊勢丹ギフトデザイン営業部の古口晃久マネージャーは、「塩レモンの味わいで仕上げたさっぱり感が好評を得た」と手応えを強調する。 ショウガ加工のプロが作ったジンジャーシロップ「クラフトジンジャーシロップ&ドライ飲み比べセット」(3780円)も購入意欲が高い商品とみており、「仕事で疲れた、頑張った日などの自分用の〝プチ贅沢品〟として需要があるのではないか」(古口氏)と期待する。 ■お歳暮をSNSで贈答 新型コロナウイルス禍を機に通販の利用が広がったことで、今では三越伊勢丹のお歳暮の売り上げの半分程度をインターネット通販が占めるようになった。 同社はSNSを通じて、住所を知らない相手にもギフトを贈れるサービス「MOO:D MARK(ムードマーク)」を2019年に開設。贈答品をSNSで気軽に送れるようになったことで、「お歳暮をちょっとしたお礼品として送る機会も増えてきている」(同)という。 民間調査会社の矢野経済研究所によると、24年の国内ギフト市場は前年比1・7%増の11兆20億円になると予想。上司や取引先向けの贈答需要が減少する一方、ネット通販を活用したソーシャルギフトなどの利用が若者を中心に伸びると予想。大手百貨店は、セルフギフトという新たな市場を掘り起こすことで、この先の数年間はほぼ横ばいで推移すると見込んでいる。