JTが「紙巻きたばこ会社」を買収した納得の理由、アメリカへ本格進出、なぜ縮小する紙巻きに注力?
ベクターを選んだ理由は「紙巻き専業でJTの投資戦略に合致している。4位でプレゼンスも上げられる。より上位の会社は独禁法の関係があり、価格も高い」(古川CFO)と説明する。 ■プルーム拡大のために稼ぐ 紙巻きで得た原資を、加熱式たばこの投資へ振り向ける狙いもある。 JTは売上高の約9割を紙巻きで稼ぐ(2023年12月期実績)。同社の予測では、世界全体で紙巻きの売り上げは2035年まで成長を続け、加熱式などが成長しても、売り上げ構成比は60%以上を維持する見通しだ(2022年は79%)。しばらくは紙巻きが収益源であり続ける可能性が高い。
一方、日本や欧州を中心に、加熱式など煙の出ない商品の需要は拡大している。将来的に構成比が紙巻きと逆転する可能性もある。 イギリスの調査会社ユーロモニターによれば、JTの加熱式の世界シェアは2023年に6%程度。同71%と他を圧倒するアメリカのフィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)や同15%を占めるイギリスのブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)に後れを取っている。JTは一段と加熱式に力を入れる必要がある。
そこでJTは、2024年から2026年までの3年間で加熱式へ4500億円投資する方針を掲げる。旗艦ブランド「Ploom(プルーム)」の販売拡大に向けたマーケティングや海外市場の開拓に力を入れる。 例えば日本では、昨年11月に税込1980円で発売した最新デバイス「Ploom X ADVANCED(プルーム・エックス・アドバンスド)」を今年12月に同980円へと値下げした。 シェア首位のPMI「IQOS(アイコス)」は最も安いモデルで3980円、BATの「glo(グロー)」は同じく最安モデルで1980円だ。JTは赤字覚悟で新規開拓に全力を注ぐ。
2023年以降はプルームの海外展開を本格化させている。目標は2026年末までに40半ばの国・地域で発売すること。2024年10月末時点で23市場へ投入しており、欧州を中心に少しずつシェアを伸ばしている。 加熱式は2028年までの黒字化を目指すが、現在は認知拡大に向けた投資先行の段階だ。ベクター社の買収は、加熱式の巨額投資のための原資稼ぎに貢献するという構造だ。 ■紙巻きの買収に「直接的な批判はない」が・・・