【高校野球】早実との激闘を制して頂点に立った二松学舎大付 市原監督が「感無量」と語った3つの理由
3つ目の感無量の理由は、試合内容にある。決勝は序盤から終盤にかけて早実ペースだった。二松学舎大付高は徐々に追い上げ、8回裏についに5対5の同点とした。そして、最後は振り切ったのである。 「何しろ、実際のところは、負けたとしてもセンバツの可能性を残す。それを考えたら、あきらめずに、くっついていくことが大切。選手たちはそんなこと(甲子園)を考えていないと思いますが……何しろ、しぶとくくっついていくんだ、と。タイブレークに入ってからは早実さんもよく守っていましたし、ミスが出たほうが負けだな、と……。でも、相手はミスをしてくれない(苦笑)。12回裏はたまたま運良く打球が、あっちに、こっちに転がったところで得点になりました。早実さんもウチも、誰かのミスでゲームが決しなかったのは良かったと思います」 勝負師ながら、教育的配慮も見せた指揮官。勝っても涙、負けても涙した両校の死闘だった。選抜出場校を議論する選考委員からしても、2校の総合力が印象に残ったはずだ。
V宣言の真相
二松学舎大付高は、秋の都大会決勝で5連敗中だった。優勝校は翌春のセンバツ出場は当確となるのに対して、準優勝校は微妙な立場で、不安な一冬を過ごす。翌年1月の選抜選考委員会において、準優勝校は原則的に東京2位校となり、関東5位校と関東・東京の一般選考枠のラスト6枠目を争うこととなる。この「5敗」のうち、選抜選出で拾われたのは3回。つまり2回は涙をのんでおり、是が非でも頂点を奪うことしか考えていなかった。 市原監督は優勝インタビューで「もし、選んでいただき、甲子園に出場できるのであれば、この夏は関東第一さんが準優勝でしたので、優勝を目指して頑張ります」と声高らかにV宣言。この真相について、試合後に語った。 「東京で勝った以上はそういう目標を持っていかないと、他のチームにも失礼にあたります。どの学校さんと顔を合わせても、相手に合わせるような感じで、しぶとくやる手応えはある。ネームバリューのある学校さんと対戦しても頑張れる。この秋を通じて、投打にわたって日替わりヒーローが誕生し、チームに波がない。誰かが良くなくても、誰かが助ける。1イニングを重ねるごとに粘り強く、自信が芽生えていきました。明治神宮大会でも、我々のできることは限られているかもしれませんが、全力でやります」 明治神宮野球大会は11月20日に開幕。二松学舎大付高は聖光学院高(東北地区/福島)と東洋大姫路高(近畿地区/兵庫)勝者と2回戦で対戦する。優勝校の地区はセンバツの「明治神宮大会枠」により1枠増となる。東京代表として、持てる力を存分に出す。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール