日本屈指の欧州サッカー通・林陵平氏が語る「セルティックの今」
日本人3選手がCLで見られる喜び
――続いてセルティックというクラブについても話をお聞きできればと思います。リーグは3連覇中で、今季も国内では敵なしという状況です。一方で欧州全体から見れば、今夏ブライトンへ移籍したマット・オライリーのように「主力を引き抜かれるクラブ」とも言えます。戦力維持が難しい状況でありながら、国内で優勝という結果を残し続けられるのはなぜでしょうか? それはやはり、スコットランドにおいては戦力が断然上だからでしょう。一人ひとりの個の能力が高いですし、誰かが抜けても国内では戦力が一番上である。 ――日本人3選手以外に林さんが注目している選手は? 10番の右ウイング、ニコラス・キューンですね。左利きのドイツ人で、テクニックもあってドリブルもできる。CL(第4節)のRBライプツィヒ戦では素晴らしい形で2ゴールを決めました。見ていてすごく面白い選手ですね。それと、キャプテンのカラム・マクレガー。アンカーとしてすごく機能しています。彼らを見ると、セルティックというチームがよく分かると思います。 ――昨季開幕前にアンジェ・ポステコグルー前監督が退任し、ブレンダン・ロジャーズ監督が就任しました。ロジャーズ監督は2016~2019年以来、2度目の指揮となりますが、そもそもどんな志向を持った監督なのでしょうか? 基本的にはポゼッションサッカーで、ゴールキックも後ろからつなごうとする。丁寧にボールをつなぎながら前進していく形なんですが、ポステコグルーのように「2-3-5に変化させて……」ということはせず、4-3-3のまま前進していく形が多いですね。時折、左サイドバックが1ボランチの脇に入って3-2でビルドアップすることもありますが。それほど形を決めているわけではなく、選手たちに少し余白を残しながらプレーさせている印象です。 ――それは直前に率いていたレスター時代から続くスタイルですか? レスターの時よりも「自分たちのほうが主導権を握れる」という状況でプレーする、つまりボールを持てる展開が多いので、セルティックではよりそういうサッカーにしているのかなと。 ――11月に旗手選手を取材した際には、「守備のことを厳しく言われている」と話していました。実際、今季のセルティックは得点が多いのはもちろん、失点がとても少ないのですが(リーグ15戦を終えて4失点)、ロジャーズ監督に「守備に厳しい」という印象はありますか? ありますね。結局、守備をやらないと勝てないので、そこのバランスは整えているのかなと思います。 ――国内ではボールが持てるセルティックも、CLでは格上を相手に守勢に回ることも多いかと思います。ここまで5戦を終えて2勝2分1敗の20位と決勝トーナメントプレーオフ圏内に位置していますが、ここまでの戦いぶりをどう見ていますか?(※12月4日に取材を実施) まさに守備の部分が生きる大会になっていると思います。ドルトムント戦のように相手のレベルが上がると難しいゲームはありますが、その中でも日本人選手が活躍してゴールを決めている。 ――残りの3試合はディナモ・ザグレブ(A)、ヤングボーイズ(H)、そしてアストン・ヴィラ(A)。前の2チームは現状、セルティックより順位が下ですから、プレーオフ圏内の24位以上でリーグフェーズを終えることも十分あり得る? あると思います。アストン・ヴィラは強豪なので難しいかもしれませんが、先の2チームに勝って2勝1分なんかで乗り切れれば……という感じですね。 ――順位表で言えば、現時点ではレアル・マドリードやパリ・サンジェルマンよりも上にいますからね。旗手選手も「今季からCLのフォーマットが変わって、チャンスがある大会になった」と話していました。 対戦相手がバラバラなので「どちらが上」とは一概には言えませんが、それが面白いところでもありますよね。当たる相手によっては、意外なクラブが上に行けるという。セルティックがCLでどこまでやれるのか楽しみですし、日本人3選手がCLという最高峰のレベルで見られる喜びは感じています。