アンドロイド観音が法話・阿弥陀如来がドローンで「来迎」…京都の寺にみる「仏教×テクノロジー」
最新の技術や文化を貪欲に取り込み、1200年の歴史を重ねてきた京都。伝統は時に斬新な発想で磨き上げられ、洗練の度を高めてきた。2025年大阪・関西万博の開幕を控える今、古都が誇る身近な「未来社会のショーケース」をのぞいてみたい。
現代の「良い師匠」に
<私は観音の名で知られる観自在菩薩。時空を超えて何にだって変身できる。今日はアンドロイド(人間型ロボット)の姿で、あなたたちと向き合うことにした> 豊臣秀吉の妻・北政所(ねね)ゆかりの高台寺(京都市東山区)。語りかけるのは一見、古刹には不釣り合いなアンドロイド観音「マインダー」だ。 シリコーン素材で覆われた顔と手以外は金属部品がむき出し。「異形の仏」だが、時折静かにまばたきする目や、緩やかに合掌するしぐさはどこか温もりも感じさせる。
背後に映像が投影される専用ホールに声が響く。<この世の全ては変化し続けている。永遠に変わることのない自分が存在すると思い込んでいないか>。聴衆と対話する演出で、般若心経の教えを説く。 法話は寺の所属する臨済宗建仁寺派の僧侶らが考案。これまでに4万人弱が体験し、仏の語りかける言葉に涙を流す人もいたという。
マインダーの発起人は前執事長の後藤典生さん(76)。アンドロイド研究の第一人者、石黒浩・大阪大教授と2017年に対談した際、「目を合わせ、語りかける仏を作れば、教えがより分かりやすくなるのでは」と思い立った。石黒教授の協力を得て、マインダーは19年、様々に姿を変えて人々を救う観音として誕生した。 約2500年前にインドで生まれた仏教は伝え方を進化させながら広まった。釈迦の教えは口伝から印刷物、レリーフ、仏像と、時代に合わせた形で人々に浸透してきた。 「マインダーが『良い師匠』となって、悩みに寄り添い、ヒントを与えてくれる存在になれば」。後藤さんは願う。
リアルな「来迎」表現
江戸初期創建の龍岸寺(下京区)は、雲に乗る阿弥陀如来が25の菩薩を従え、極楽浄土から死者を迎えに来る「来迎」を、小型無人機「ドローン」を使って再現している。 来迎は平等院の「雲中供養菩薩像」や知恩院の「早来迎」など、仏師や絵師が当時の最先端技術を用いて表現してきた。
京都で仏像の修復や制作に携わる三浦耀山さん(51)もその一人。「現代なら、実際に阿弥陀様を宙に浮かせられる」。木彫りした像を基に樹脂製の軽量仏を作り、住職の池口龍法さん(44)に提案して18年に実現。法要などで披露し、昨年には箔押しを施して金色に輝かせた。 檀家から「葬式でも飛ばしてほしい」と頼まれ、実現させたことも。三浦さんは「未来に残る表現になるかは分からないが、続けることが大切。リアルにこだわりたい」。 100年先、1000年先、仏たちはどんな姿で人々の前に現れるだろうか。(畝河内星麗)