旧サーブ工場の資産売却 NEVS存続危機 重大な転換期を迎えるトロルヘッタン
サーブの歴史が詰まった工場、最終章へ
スウェーデン南西部トロルヘッタンにある旧サーブ工場で使用されていたプレス機などの生産機械が、工場の清算手続きの中で売却対象としてリストアップされた。 【写真】サーブの伝統を引き継いだニューモデル、実現から遠のく【NEVSエミリーGTを写真で見る】 (12枚) 昨年、工場を運営していたナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン(NEVS)が「休眠モード」に入り、340人の従業員のうち320人が解雇された後、工場は休止状態にあった。そして今月に入り、残りの従業員の解雇が発表された。 NEVSはこのリストラと生産休止について、投資資金を調達できないことが原因であるとほのめかした。 同社CEOのニーナ・セランダー氏は、「今回の決定は、当社のオーナーである恒大集団と、投資家候補との契約交渉がまとまらなかったことによるものだ」とした。 恒大集団は中国第2位の不動産開発会社であったが、コロナ禍で債務危機に陥った。NEVSにとって、初の量産車であるエミリーGT(Emily GT)の開発完了まであと1年半というタイミングだった。 その後まもなく、エミリーGTのプロジェクトが新興EVメーカーのEVエレクトラに買収されたことが明らかになった。 当時、EVエレクトラのCEOであるジハード・モハメッド氏は次のように語っていた。「再びトロルヘッタンからクルマを送り出すことになる。今回の買収は、開発から量産までを一貫して支援する必要があることを十分に認識した上で行った。わたしは自社生産と強固なバランスシートを信じている。また、トロルヘッタンには我々のビジョンを実現できる人材がいると信じている」 しかし、サーブを専門に取扱うブログサイト『Saab Planet』の報道によると、NEVSは今年5月にEVエレクトラとの契約を打ち切っており、セレンダー氏は「技術データ、知的財産、ハードウェアなどはこれまで一度もEVエレクトラに送付または引き渡されたことはない」と述べたという。 現在、トロルヘッタン工場はスウェーデンの企業Stenhaga Investが所有している。 地元メディアは、Stenhaga社が今後の方向性について協議中であり、中国製EVに対する新たなEU輸入関税を回避するために、中国メーカーが参入する可能性もあると報じている。
チャーリー・マーティン(執筆) 林汰久也(翻訳)