SDV時代の車載インフォテインメント、パナソニックオートモーティブシステムズの強みと戦略
パナソニックオートモーティブシステムズが手がけたマツダ『CX-60』のIVIシステム
パナソニックホールディングス傘下のパナソニックオートモーティブシステムズ(以下PAS)は3月22日、車載情報通信システム(IVI)事業に関するプレスセミナーを開催。その分野が高い成長性を持つ中で、同社にとって中核事業となっている背景について説明した。 ◆IVI事業はグローバルでトップクラスのシェアを獲得 PAS全体の売上規模は1兆2975億円(2022年)。その中でIVI事業を含むインフォテインメントシステムズ事業部は4割近い4855億円と、IVI事業は同社にとって紛れもなく中核事業に成長した。グローバルでもIVI事業は2位、ディスプレイオーディオではトップシェアを確保するに至っている。 パナソニックオートモーティブシステムズの売り上げで最大規模となっているIVI事業 この日、登壇したPASインフォテインメントシステムズ事業部IVIビジネスユニット長の中村知樹氏によれば、「PASのIVI事業として初めての挑戦は2017年、トヨタ自動車向け車載OS開発“AGL(Automotive Grade Linux)”だった」とし、その経験がLinux、Androidなどの汎用OSを活用につながり、ホンダ、マツダへと採用が拡大した。これが世界トップクラスに立つきっかけとなったという。 これは「車載機が民生の機能を搭載していく中で、この汎用OSの採用に対し、パナソニックグループがスマホ、AV機器といったコンシューマー向けの開発の他、知見、技術、人材などを持っていたからこそ達成できた」と中村氏は説明する。 民生で先行していた機能を車載で展開することで優位性を発揮できた そもそもIVIは「In-vehicle infotainmen」の略で、PASではオーディオシステム、ディスプレイ表示、スマホ連携、ナビ機能を搭載し、車両情報と連携した車載情報通信とした統合システムと定義。「車室内におけるインフォメーションとエンタテイメントを重ね合わせ、司る車載機器」としている。 そのIVI事業を進めるにあたって見逃せないのが、急速に進むクルマの「SDV(Software Defined Vehicle)化」への対応だ。中村氏は「クルマの電子化や電動化が進んだことで、技術トレンドは明らかにハードウェアからソフトウェアへと移行しており、それに伴ってこれまで機能ごとに搭載されていたECUがドメインごとに統合され、やがて統合HPC(High Performance Computer)化されていく」とクルマを取り巻く環境の変化について言及した。 ソフトウェアを中心としたアーキテクチャ(SDV化)が急速に進行中 ◆強みを活かしてIVI事業を今後もさらに拡大 これによってシステムは大規模化するが、中村氏は「PASはこれまでにも製品開発プラットフォームや高度な開発力に加え、グローバルITプレーヤーやシリコンベンダー、カーメーカーといった多様な企業と連携してきた(ことが功を奏した)」と説明。今後も「価値創出、共創活動」「大規模ソフトウェア開発」「グローバル生産・供給体制」と開発における3つの競争力において、「PASならではの強みを活かしてIVI事業を拡大していきたい」との抱負を述べた。 パナソニックオートモーティブシステムズの「価値創出、共創活動」「大規模ソフトウェア開発」「グローバル生産・供給体制」と開発における3つの競争力 その中で一つ目の「価値創出、共創活動」はグループシナジーに関するもので、「AV、モバイル機器、ホームなどの幅広い分野で事業を展開しており、ここで人と暮らしに寄り添ったノウハウ、知見をも活かして車載事業に展開している。これが他社にはないPASの大きな強みになっている」と説明。具体的には「日米中欧アジアの5極に拠点を構えるグローバルフットプリントを活かし、地域ごとに各メーカーとパートナーシップを結んで地域のトレンドに合わせた価値が提供する。そこではカーメーカーが持つ知見も共有しており、これらの戦略的パートナーシップに基づき、クルマの価値向上を目指すことになる」とした。 二つ目の「大規模ソフトウェア開発」では「開発拠点や人が多岐にわたっており、さらにその評価が膨大となるなど様々な課題解決が必要だ。その解決こそがQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)にきわめて重要」と指摘。そのためには「大規模ソフトウェア開発の成立を目指すノウハウを蓄積し、それが事業競争力の源泉となっていく。高品質かつ高速でインテグレーションできるサイクルを、ソフトウェアのリリースと共に構築し、AI活用やクラウドネイティブな環境の確立も推進していきたい」とした。
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レスポンス 会田肇