電気代の値上がりで収益アップが期待される企業は?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている! 【図表】イーレックスの株価の値動き 今週の研究対象 電気代の値上がり(イーレックス) 11月使用分から、電気代がさらに値上がりする見通しだ。生活が苦しくなるなら、投資でその分を取り戻したい! 電力関連でいい投資先がないか、検討してみた。 助手 電気料金が11月の使用分から値上がりするとか。東京電力では、標準的な家庭で1ヵ月608円も! 坂本 政府の「酷暑乗り切り緊急支援」が10月で終了したからだよ。まぁ、実は支援期間中の9月にも、396円の値上げがあったんだけど。 助手 2ヵ月合計の値上げ幅は1000円超ってことですか! 坂本 火力発電に使う天然ガスや石炭の価格が、ウクライナ情勢のあおりで高止まりしているからねぇ。 助手 なら、電気料金高騰分を取り戻せそうな投資先ってないですかね? 坂本 そうだなぁ。新電力のイーレックスはこの機会に見直せそうかな。 助手 確か新電力って、東京電力みたいな昔からある大手電力会社じゃない、新興の電気の小売業者でしたね。2年くらい前に何社も事業撤退していたイメージが。 坂本 よく覚えてますね。新電力の多くは自前の発電所を持たずにコストを削減し、電力の卸売市場から電気を仕入れて割安に売っていました。ところが2022年にウクライナ侵攻が始まり、卸売市場でも電力が高騰。消費者と約束した小売価格より仕入れ価格のほうが高い「逆ザヤ」が発生した。それで体力を削られ、撤退や倒産が相次いだんです。 助手 イーレックスだって新電力なんですよね。そのときはたまたま生き残れたかもしれませんが、これからも大丈夫って保証はないんでは? 坂本 イーレックスはほかの新電力よりも逆ザヤになりにくい仕組みがあるから大丈夫だと思う。まず、同社は他社に比べて電力のトレーディングノウハウが蓄積されています。 助手 どういうことですか? 坂本 同社は新電力の中では老舗中の老舗なんですよ。日本卸電力取引所の設置を国に働きかけていたうちの一社でもあります。電力取引の草創期から多様なケースの取引を積み上げて得た知見には一日の長がある。 助手 なるほど。 坂本 その知見のおかげで、逆ザヤになりにくい料金プランの開発も実現しています。例えば同社の「ハイブリッドプラン」。卸売市場が安価なときはそちらから仕入れ、リスクヘッジとして電力先物取引も併用して価格を抑える。電気卸売価格の変動にかかわらず一定の利益を確保でき、顧客も電気代の予測が容易になる。トレーディング技術が必要だから他社にはマネできません。 助手 顧客にもメリットがあるなら、契約者が増えそうでいいですね。ただ、トレーディングノウハウだけで本当に仕入れを抑えられますか? 坂本 実は、イーレックスは自前で発電もしているのが強みなんです。現在、国内で4基のバイオマス発電所を持つ上に、2ヵ所の建設を計画しています。自前の発電所があるから電力の安定供給ができるし、外に売ることもできる。 助手 バイオマス発電? 坂本 産業廃棄物のパームヤシガラや木くずなどを燃焼させる発電方法ですよ。最近はカーボンニュートラルな電力として法人顧客にも高く売れるとか。 助手 なら、その燃料が高騰するってことはないんですか? 坂本 鋭いね。バイオマス燃料の確保は年々奪い合いになっているんですが、イーレックスではパームヤシの農園に直接出向いたり、製材所など木くずの出る事業所に出資して、安定供給を実現しています。安価な電力を安定供給できる新電力としては同社は1番手。長期投資がいいね。 今週の実験結果 安価な電力を今後も安定的に供給する仕組みをがっちり整えています 構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗