『モンスター』が投げかける既存の価値観への疑問 ドラマ終盤の舞台は群馬へ
粒来(古田新太)はなぜいなくなったか
前話までで亮子と粒来の共通点が浮き彫りになってきたが、第9話を観ると、亮子のベースは粒来にあることがはっきりわかる。幼い頃から父が働く事務所に出入りしていた亮子は空気を吸うように法律に親しんできた。その中で、欲望と駆け引きがうずまく社会のありのままを見つめてきたのだろう。 思考過程をトレースできる亮子は、粒来のクローンのように見えるが、内心では葛藤を抱えている。父である粒来との関係に悩み、親離れできないまま亮子は一人で生きなくてはならなかった。裁判をゲーム感覚でとらえ、個人的な感覚を超越して俯瞰で観ている亮子が、自身のルーツとどう向き合うのか。そのことは、父を通して知る世の中の公正さや、人間に対する見方の根幹にも関係してくると思われる。 後日談の体裁を取った第9話は、終盤に向けた布石になる回だった。現在の岡村(近藤芳正)から聞いた群馬との接点。亮子を指名した依頼人の横沢さくら(前田敦子)は群馬在住で、キングの出身地も群馬。23年前に神波姓を名乗っていた粒来は、なぜ身を隠して名前を変えなくてはならなかったのか。その鍵は14年前の事件に関係があり、岡村が何かを知っていることは確実だ。次回予告では、杉浦(ジェシー)が亮子に激しく言葉を投げかけるシーンもあり、クライマックスに向けて動きが予想される。
石河コウヘイ