絶えない不祥事 地方議員が“劣化”する2つの要因
「追認機関」になり下がった地方議会
地方議会の本来の役割は、執行部に対するチェックと政策提案だが、現実はそうはなっていない。地方議会の多くが執行部となれ合い、「追認機関」になり下がっているのが実態だ。何しろ地方議会は閉ざされた特殊な狭い世界で、メディアの監視や住民のチェックなどなきに等しい。手抜きをしようと思えば、いくらでもできる。そんな彼らはもっぱら、次の選挙に勝ち抜くための集票活動や票固めに力を入れるのだ。住民のためではなく、自らと自らの支持者のために議員権限を活用するのである。 こうしたごく一般的な先生方にとってどうにも目障りになるのが、真面目に本来の議員活動に取り組む議員の存在だ。議会の雰囲気をかき乱す迷惑な存在と捉え、距離をおくだけでなく、彼らの足を引っ張るようになる。つまり、いびり出すのである。理不尽な攻撃にさらされる側にとってはたまったものではない。白旗をあげて、「朱に交われば赤くなる」ケースも生まれてしまう。また、真摯に活動する議員の中には意欲を喪失してしまい、短期間で引退してしまうという残念な事例も少なくない。何しろ本来の議員活動を懸命にやっても、同僚はもちろん執行部からも煙たがれ、嫌われ、その上、頼みの住民からもきちんと評価されないことが多いからだ。住民も議員を自分たち専用の便利屋と誤解している傾向があり、地域全般に目配せして真面目に働く議員を評価しないのである。 つまり、地方議会は“怠け者の楽園”と化し、「悪貨が良貨を駆逐する」歪んだ世界になっているのである(もちろん、孤軍奮闘しながら本来の役割を果たしている地方議員も各地に存在する。そうした議員の働きを地域住民はもっときちんと評価すべきと考える)。
新人候補の参入を阻むさまざまな“壁”
こうした現象に拍車をかけているのが、現職有利のもろもろの制度である。例えば、現職が議員活動という名目で毎日、堂々と集票活動を展開できるのに対し、新人候補は公職選挙法の細かな規定により活動の手足を縛られている。その上、正式な選挙運動期間はわずか7日(一般の市や特別区の場合)しかない。知名度も特定の組織・団体の支援もないまっさらな新人候補にとって、当選への壁はあまりにも高い。 また議会が常に平日昼間に開催されるとあって、会社勤めのまま議員を兼務するのは不可能に近い。任期中の休職を認める企業もなくはないが、勤め人の場合、ほとんどが職を投げ打って出馬しなければならない。抱えるリスクがあまりにも大きく、意欲と力量などを兼ね備えながらも立候補を断念する場合が後を絶たない。現職の後継者以外、新人が名乗りをあげにくい仕組みが出来上がっているのである。こうした現状をごく一部の人たちがにんまりとみているのは、間違いない。固い組織票を持つ限られた人たちしか議会に議席を持ちえない、歪んだ構造ができあがってしまっているのである(大都市部を除く)。