「この1年行っていない」人が半数近く、「親しみを感じる」人はわずか3割強… 「海と人をつなぎたい」思いを込めたビジュアルブック
海への関心を高める新しい教育ツールの開発
――今回制作した、海と環境がテーマのビジュアルブック『あおいほしのあおいうみ』について教えてください。 このビジュアルブックを制作することになったきっかけは2つあります。 1つはコロナ禍を抜けた2023年に奄美大島や三重県の熊野、長崎県の対馬など、海に関わる地域を訪れる機会が増え、自分たち自身が海の問題への関心が高まったこと。もう1つは、公益財団法人ブルーオーシャンファンデーションの代表理事であり、サラヤ株式会社の代表取締役社長である更家悠介さんから「子どもたちを対象にした海の本を一緒に作ろう」という相談があったことです。 このビジュアルブックでは、海への好奇心をとりもどしてもらうことと海洋リテラシーの向上を目指しています。日本財団がおこなった「海と日本人に関する意識調査 2022」によると、この1年間で海に行ったことがない人が45%に達しており、海に親しみを感じているという人も37%しかいません。 一方で、海は気候変動対策や生態系保全など、環境問題においてとても重要です。この心理的距離と重要性のギャップを埋めるためのメディアとして制作しました。 本の構成は、宇宙から始まり、地球、生物と循環、環境と社会、生活と仕事といったテーマで、徐々に身近な話題に近づいていく形になっています。各セクションでは、イラストや写真などのビジュアルを中心にしながら、専門家による解説も交えて、海に関する多様な側面を紹介しています。 ――制作過程で特に力を入れた点を教えてください。 答えが載っている本ではなく、読んだ後に更なる好奇心が湧いてくるような本にすることです。イラストも単なる説明的なものではなく、見ているだけでも楽しく、何度見ても新しい発見があるようなものを目指しました。 例えば、宇宙のページではイラストレーターの原田俊二さんの切り絵を使った温かみのある表現を、生物のページは友永たろさんに依頼し、海の生き物たちの驚くような生態や多様性をカラフルでいきいきした絵で表現していただきました。また、地球のページではワタナベケンイチさんのイラストで、宇宙人の先生が生徒たちを連れて地球に学びに来るという設定にしました。 さらに、様々な分野の専門家と協働しました。研究者、環境活動家など、多様な知見を集めることで、内容の質と信頼性を高めるとともに、多角的な視点を提供できたと思います。 レイアウトにもこだわり、読者が自由に情報を探索できるよう、ページ内に複数の小さな情報ブロックを配置したり、関連する情報同士を視覚的に結びつけたりするなど、柔軟な読み方ができるようになっています。読者が能動的に本と関わり、自分で発見する楽しさを味わえるように工夫しました。