「この1年行っていない」人が半数近く、「親しみを感じる」人はわずか3割強… 「海と人をつなぎたい」思いを込めたビジュアルブック
クラウドファンディングで広げる学びの輪
――クラウドファンディングをおこなった理由と、その結果について教えてください。 広報と資金調達の2つです。本のことを多くの人に知ってもらいたかったこと、そして学校への寄贈プロジェクトのための資金が必要だったからです。 2003年に作った『1秒の世界』という本では、出版社の協力で全国の小中高すべての学校、約4万5000校に1冊ずつ寄贈しましたが、その方法では私たちが先生との強いつながりを持つことはできませんでした。そこで最近は、本当にこの本を使って授業をしたい先生に手を挙げてもらう方式に変更しています。 クラウドファンディングでは結果として、目標の120万円を大きく上回る190万円が集まりました。これにより、100校に40冊ずつ、つまり4000冊を学校に寄贈することができます。さらに来年の春にも同規模の寄贈を予定しています。 1校あたり40冊ずつ寄贈するのは、クラス全員が1冊ずつ持てるようにするためです。先生たちからの要望で実現したこの方法により、より効果的な授業が可能になると期待しています。 また、クラウドファンディングを通じて、多くの人に海の環境問題への関心を持ってもらえたことも大きな成果だと感じています。支援者の中には、自身の子どもの学校に本を寄贈したいと申し出てくれた方もいました。このように、プロジェクトの輪が自然と広がっていくのを実感できました。
学生への課題から学ぶ環境教育のあり方
――教育現場で印象に残っているエピソードはありますか。 印象深いのは、多摩美術大学の授業で、学生たちに「海に行く」という課題を出したときのことです。学生たちに海に行ってもらったところ、多くの学生が「何年ぶりかに海に行った」と言うんです。中には海を怖いと感じる学生もいて、東日本大震災の津波の影響があるのかもしれないと気づかされました。一方で、地方出身で海の近くで育った学生は、海に対して強い愛着を持っていました。 また、海への印象も様々でした。東京近辺の海に対しては「臭い」「汚い」といった否定的な印象を持つ学生もいましたが、夕方まで滞在すると光が当たってキラキラしてきれいだったと感想が変わることもありました。 さらに、海に行くことに対する障壁も見えてきました。「ベトベトになるからいや」という理由で泳がない学生もいましたし、シャワーや着替えの設備の悪さを指摘する声もありました。 この課題を通じて、現代の若者と海との関係性の変化や、海に対する多様な印象を直接知ることができました。同時に、環境教育においては、単に知識を伝えるだけでなく、実際の体験や創造的な活動を通じて海との新しい関係性を構築することの重要性を再認識しました。