津田健次郎が今年も実感したこと「30年をもってしても、芝居というのはよくわからなくて面白い」
表現者として、ネガティブな感情も大事にしている
──金儲けのために罪のない動物たちを狩る人間たちを、クレイヴンは自分の“狩り”の対象としています。そんな彼に共感できるところはありましたか? 僕は正義感が強いわけでもないですし、クレイヴンも正義感で戦っているというよりも「悪党どもが気に入らない」とか「悪の在り方が気に入らない」みたいな感覚で狩りをしている印象があるので……共感できるほど彼に近しいものを自分のなかに感じることはありませんが、「わからなくはない」という気もしました。 ──クレイヴン自身にも抑えることができない“怒り”が彼の原動力になっていることに関してはいかがでしょうか? それはすごくわかります。彼ほどではないですが、僕も怒りの感情をつねに抱えて生きている自覚がありますから……というのも、僕らのような表現していく人間にとって、ポジティブな感情だけでなく“怒り”のようなネガティブな感情もすごく大事なものなんですよね。特に、社会に向いている目みたいなものからくる怒りについては、自分と共通するものがある気はしています。 ──弟のディミトリもネガティブな感情を抱えたキャラクターですね。 自分は弱いから父親に認めてもらえないと、幼い頃からずっとコンプレックスを植え付けられてきて、それが思わぬ方向へ向かってしまうディミトリは見ていて感情移入しやすいキャラクターだと思います。ただ白くて美しいだけじゃない彼の人間臭さに共感する部分はあるけれど、共感しきれない、応援しきれない、みたいなところが面白くて、登場人物のなかでも特に興味深いキャラクターだと感じました。 ──色々とこじらせているクレイヴン一家ですが、津田さんご自身は“逃れられない血の絆”みたいなものを感じたことはありますか? そんなに大層なものではありませんが、「あれ? 親に顔が似てきたな」とか(笑)そういったことはあります。完全に別の人間なのに、顔が似ているという……遺伝子レベルで刻まれている何かがあるんでしょうね。若干のめんどくささは感じます(笑)。