「生きていくのがつらい人」に絶対に知ってほしい「毒舌な哲学者」の「人生の教え」
現代社会は、とにかく生きづらい。そして運命は残酷だ。生きていくということは、なんて苦しいのだろう。 【写真】「生きていくのがツライ」…「悩める大人」に知ってほしい「哲学者の教え」 「苦しみに満ちた人生を、いかに生きるべきか」ーーこの問題に真剣に取り組んだのが、19世紀の哲学者・ショーペンハウアー。 哲学者の梅田孝太氏が、「人生の悩みに効く哲学」をわかりやすく解説します。 ※本記事は梅田孝太『ショーペンハウアー』(講談社現代新書、2022年)から抜粋・編集したものです。
とにかく生きづらい現代社会
「運命がカードを切り、わたしたちが勝負する」──。ショーペンハウアーによれば、人生はいつも思いどおりにはならず、ぎりぎりの勝負の連続である(『幸福について』第5章第48節、邦訳328頁)。 わたしたちは、生きる目的など見出せないままに、やってくる課題にひたすら対処し続け、与えられた状況のなかで最善の一手を模索し、時には失敗しながらも、日々をかろうじて生きている。 もちろん、未来を正確に予測することなどできはしない。わたしたちの頭脳はそこまで賢明ではない。内なる衝動のようなもの、研ぎ澄まされた本能的なカンにしたがって選択肢を選ぶほかない。明日、勝負に負けるのは自分かもしれない。 現代社会はとにかく生きづらい。昨今は、いよいよ厳しく勝者と敗者が分かれてしまう状況にある。運命が用意する手札は、多くの人にとって、あまりに貧相なものばかりだ。 こんなことなら生まれてこないほうがよかった。そう口にする若者が増えている。この考えは「反出生主義」とも呼ばれ、大きな議論を呼んでいる(第4章で詳述する)。 国内の状況を一瞥するだけでも、出口のない生きづらさが現実の問題となって横たわっていることがわかる。少子高齢化に歯止めはかからない。気候変動問題によって、将来の経済発展に期待はもてない。地域間で、世代間で、格差は広がり続けている。 多くの人がもはや家庭を築くことを望めないほどに賃金水準は低いままで、政治不信も募る一方だ。生まれを努力によって凌駕することは、一部の例外をのぞけばほとんど不可能なことにさえ思える。