マンションを相続放棄するときの注意点 手続きや管理義務を免れる方法を解説
3. マンションの相続放棄後、誰がマンションを管理するのか
相続放棄をすると、相続に関する一切の責任から解放されるように思われるかもしれませんが、そうではありません。 相続放棄をした人は、その放棄により相続人になった人が相続財産の管理を始めることができるまでは、その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。なぜなら、相続人が相続放棄をしたからといって相続財産の管理をしないでいると、その結果、相続財産が滅失・毀損されるなどして他の相続人や債権者などに損害を与える可能性があるからです。 3-1. 他の相続人が相続してくれたら、管理義務も引き継がれる 他に相続人がいる場合は、その相続人がマンションを相続し、管理することになります。管理費用なども他の相続人が支払います。 3-2. そのマンションを「現に占有」している場合は、相続放棄後も保存義務が残る その相続財産を「現に占有」している場合、他の相続人や相続財産清算人に引き継ぐまでは、その財産の保存をしなければなりません(民法940条)。 従って、他に相続人がいない場合や、他の相続人全員が相続放棄をした場合、そのマンションを「現に占有」している相続放棄者は、そのまま保存をしなければなりません。 なお、「現に占有」とは、亡くなった親名義のマンションに住んでいるような状態を指します。 3-3. 「現に占有」していない人が相続放棄した場合は、保存義務はない 一方、相続財産である、被相続人のマンションにまったく関わっていない場合には「現に占有」とは言えないため、相続放棄した時点で保存義務からも解放されます。 ただし、「現に占有」の解釈は明確になっていないため、「自分は親のマンションに住んでいなかったから相続放棄すれば管理義務もない」などと自己判断せず、弁護士に相談することをお勧めします。
4. 「現に占有」している相続人がマンション保存義務を免れる方法
では、「現に占有」している相続人は相続放棄したとしても、永遠にそのマンションを保存しなければならないかというと、そうではありません。家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てをし、選任された相続財産清算人に管理を引き継ぐことで、保存義務を免れることができます。 相続財産清算人とは、相続人の存在・不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する人がいなくなった場合も含まれる)に、相続財産の管理や処分をするため、家庭裁判所によって選任される人です。 ただし、相続財産の管理に要する経費や相続財産清算人の報酬等が相続財産から支払えないと見込まれる場合は、申立人が経費や報酬の相当額を予納金として家庭裁判所に納めなければなりません。 予納金は、個別の事情によるものの、概ね20万~100万円程度です。最終的に相続財産から経費や報酬が支払えなければ、これらは予納金から支払われ、その分は申立人には返ってきません。このような負担が生じ得ることを踏まえつつ、相続放棄をするかどうかを決めてください。