「サンフレッチェ広島が知りたい情報はすべてオープンにする準備がある」――1. FCケルンのアカデミーダイレクターが語る育成業務提携の意義
ケルン体育大学との連携
――あらためて、提携相手としてサンフレッチェ広島を選んだ理由を教えてください。 「育成を重視するという同じ理念を持っていることです。サンフレッチェ広島はJリーグの中でも屈指の育成クラブで、話を進めていく中で様々な共通点や共感できる考えがあったことは、提携において大きなポイントでした。我々はスポンサーをはじめ、様々なパートナーを探す上で理念を共有できるかを重視しています」 ――同じ理念を共有できているからこそなのでしょう。サンフレッチェ広島との育成業務提携を2027年まで3年間延長することが発表されました。 「双方の指導者が日本とドイツを行き来して、ディスカッションする中で違う視点を共有できるのは有意義なことです。今回の広島訪問では、日本の高校年代における『部活動』の課題を聞きました。ドイツではクラブチームでプレーするのが一般的なので、日本で(部活を指導する)先生の労働時間が長くなっている話は印象的でした。日本でドイツのようなクラブチームを作るためには……といった視点で育成を考える機会を得られたのは、私にとっても学びになっています」 ――ドイツ人であるスキッベ監督がサンフレッチェ広島で結果を出していることは、本提携にどのような影響がありますか? 「我々との提携クラブの監督が、必ずしもドイツ人でなければいけないということはありません。ただ、スキッベさんがサンフレッチェ広島で評価されているのはとても嬉しいことです。繰り返しですが、スキッベさんが若手選手の育成に定評がある監督であるという点も、アカデミー出身選手を積極的に起用したいと考えている1. FCケルンの理念に通じますし、(スキッベ監督の存在は)ポジティブな影響があると言えます」 ――ケルン体育大学で学び、1. FCケルンの国際部での勤務実績もある松尾喜文コーチ(サンフレッチェ広島)も本提携に影響を与える1人なのかなと想像しています。 「松尾コーチの存在は(提携相手である)1. FCケルンにとっても、スキッベ監督にもとってもポジティブな影響があります。ドイツ語で直接コミュニケーションをとれることは勿論、我々のクラブの仕組みや考え方を理解してくれている人がサンフレッチェ広島にいるのは非常に重要なことです」 ――サッカー指導者養成機関としても知られるケルン体育大学は、多くの日本人も学んだドイツの名門です。1. FCケルンとの関係を教えてください。 「1. FCケルンはケルン体育大学と様々な分野で連携しています。例えば、『スポーツ心理学』の分野。1. FCケルンではクラブ内の全カテゴリーのチームに必ず担当のスポーツ心理学者が帯同しています。スポーツ心理学者は担当チームとチーム内の選手全員とシーズンを通した密なコミュニケーションをもって育成に関わってくれています。他にも1. FCケルンが協力して、学生が育成に関する研究や論文を書くこともありますし、逆に大学からスポーツ科学の最新情報を提供してもらうこともあります」 ――ケルン体育大学との提携はクラブの特徴の1つです。そうした地域性を含め、日本で言うところの県民性、街の歴史も含めて目指すサッカーが決定される側面もあると考えますが、1. FCケルンが重視する育成方針は何ですか? 「育成方針は多岐に渡るので、すべてを説明するのには時間がかかります。ただ、重視していることの1つを挙げるならば『人間を育てている』という意識を持つことです。我々にとっての育成とはサッカーだけではなく、人間性を育てることも含まれます。 では、人間性を育てるとは何なのか。どのようなプロセスをふめば選手を成功に導けるのか。現在、ヨーロッパの各国リーグでプレーする1. FCケルンのアカデミー出身の選手は70人程度いて、ここまでの育成は成功していると思っていますが、新しい方法も含めて探り続けることも重要です」