中谷美紀 ごみ出しでは改めて東京のマンションのありがたさを感じたりして。ご近所づきあいに山歩き、庭仕事。ザルツブルクでの「憧れの田舎暮らし」について
2018年にドイツ人ヴィオラ奏者のティロ・フェヒナーさんと結婚した女優の中谷美紀さん。現在では一年の半分を日本で、残りをオーストリアで過ごすという二拠点生活を送っています。オーストリアでは庭造りにご近所付き合いなど、ちょっと不便だけれど自由な日々を楽しんでいるという中谷さん、特に“ごみ出し”では東京のマンションの便利さを改めて思い知らされたそうで――。 【写真】「国際結婚、夫の一人娘…。自分を変えたオーストリアの新しい家族」について語る中谷さん * * * * * * * ◆憧れの田舎暮らし 夏の約2ヶ月を自然豊かなザルツブルクにて過ごしたのだけれど、憧れの田舎暮らしでは、東京では当たり前に手に入ったものが、そう簡単には手に入らず、自ら身体を動かし、労働をしなければ手に入らないことも多かった。 まずはごみ出しであるが、有料の上、二週間に一回だけの回収のため、日頃からごみを最小限にするよう努める。 生ごみはコンポストに投入し、食事は残さぬように少なめに盛り付け、お鍋の中の残り物も極力食べきるようにした。リサイクルごみは、自治体が設ける簡易集積所に自ら持ち込むことが必須となる。それも週に2回だけ訪れる簡易集積所の開放日に、段ボールやポリプロピレンの容器などを車に載せ、雨であろうが炎天下であろうが、それらを移動させるのである。 東京のマンションにて24時間、年中無休でごみ出しを許されていることが、どれほどありがたいことだったのか、改めて思い知らされた。
◆日本人の感覚に近いものをもつオーストリアの人々 欧米諸国の人々は概して他人のことなどお構いなしで、自己主張が強いものだと思っていたけれど、オーストリアの人々は日本人の感覚に少々近いものがあり、人目を気にして極力目立たぬよう保守的な装いを心がける方がいらしたり、とりわけザルツブルクの田舎ではご近所同士の相互扶助の精神も強く、景観を乱さぬように細心の注意を払う必要がある。庭の芝刈りを定期的に施すことはもちろんのこと、テラスや窓辺に据えられたフラワーボックスにお花がないなんてもってのほかである。 本来ならば、白いお花だけの単色か、せいぜいグリーンを加えただけのシンプルなコーディネートで盛夏のテラスを彩るつもりが、嵐の中、ずぶ濡れになりながら生花店にて購入した花たちは、すでに近隣の方々が買い尽くして品薄状態で、ピンクに黄色、青に紫と、少々雑多な色合いになってしまった。 購入したばかりのマウンテンバイクやロードバイクにて大小様々な家を通り過ぎる度に、美しく整えられた窓辺のフラワーボックスを眺めては、次こそはもう少し趣味の良いコーディネートにしようと心に誓うのであった。
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