「ウクライナ軍のドローンは1人がエサとなり他の2人で撃墜せよ」北朝鮮兵士の日記が示す希望なき肉弾突撃作戦の内実
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ 戦士した北朝鮮兵士の日記が明かす悲惨な戦術 [ロンドン発]米紙ウォールストリート・ジャーナル(11日付)は「戦死した北朝鮮兵士の日記が明かす悲惨な戦場戦術」と題し「無防備で経験が浅く、忠誠心に満ちた兵士はウクライナ軍との戦闘の最前線でドローン(無人航空機)攻撃により数千人単位で死んでいく」と報じた。 【写真】戦死した北朝鮮兵士が持っていた「イラスト解説」付きのウクライナ軍のドローン撃退法を記したメモ ウクライナ軍のドローンに接近されたら、3人1組に集まる。1人が7メートルの距離を保ちながらオトリとなってドローンをおびき寄せ、他の2人が10~12メートルの距離から狙いを定め精密射撃で撃ち落とす。オトリが止まるとドローンも空中で停止し、撃墜しやすくなる。 ドローン対処法を青インクでしたためたノートにはオトリ役の兵士は「エサ」と記されている。昨年12月、他の同胞2人とともに銃撃戦で殺害された北朝鮮兵士(27)の日記には前線生活、戦闘戦術の記述、金正恩朝鮮労働党総書記への敬愛の念も綴られている。 「愛する父と母のいる温かい家庭を離れ、ここロシアの地で祖国を思う。最も親しい同志の誕生日を祝う」「たとえ私の命に代えても最高司令官の命令をためらうことなく遂行する」「金正恩総書記の特殊部隊の勇敢さと自己犠牲を世界中に示す」(北朝鮮兵士の日記より)
■ 捕虜になるなら互いに撃ち合って自決 戦死した北朝鮮兵士の日記について、北朝鮮関連のニュースを専門とする独立系ニュースサイト「NKニュース」も6日付で「現代の戦争に対する準備もできていない若者たちの個人的な経験を明らかにしている」と伝えている。 この兵士が所持していたロシア軍のIDカードには韓国名と1997年生まれと記載され、居住地は露トゥヴァ共和国、職業は溶接工とされていた。北朝鮮に残された家族への報復を恐れて降伏より自決を選ぶ兵士が多い。捕虜になるぐらいなら互いに撃ち合って自決する。 ウクライナ保安庁(SBU)のメッセージアプリ「テレグラム」への投稿(11日付)によると、ウクライナ特殊作戦軍の部隊が1月9日にロシア西部クルスク州で北朝鮮兵士を捕獲。ウクライナ軍の空挺部隊もクルクス州でもう1人の北朝鮮兵士を捕らえた。 貴重な北朝鮮兵士捕虜は文字通り、生きた情報源になる。 2人はキーウに連行され、SBUに尋問されている。ウクライナ語、英語、ロシア語を話せないため意思疎通は韓国情報機関の協力で韓国人通訳を介して行われている。1人はトゥヴァ共和国で登録されたロシア軍のIDカードを所持しており、もう1人は書類を持っていなかった。